愛すれど哀しく 作品情報

あいすれどかなしく

洗濯女のベルタ(O・ピッコロ)がパン職人ブブ(A・フアルジ)と恋におちたとき老父はベルタに強く忠告した。だが、ハンサムなブブに夢中のベルタは誘われるまま同棲生活に入った。男らしいブブにひかれるベルタに、やがて、ブブは正体をあらわした。うだつのあがらぬパン屋勤めを辞め、ベルタに娼婦になれと強要しだしたのだ。ブブを失いたくないベルタはやがて夜の街角に立つようになった。からだは疲れるが稼いで帰ったときのブブの笑顔は、次の日またベルタを街角に立たせた。ある日、街の歩道で知り合ったピエロ(M・ラニエリ)は、田舎出の男で、パリに職を求めてやってきたばかりだった。いつか二人の間に恋の感情が芽生えた。しかしベルタにはブブとの生活があった。そしてブブとのきずなが決定的となった。“悪い病気”に感染したベルタにブブの言葉が突き刺さったのだ。「おれの唇を噛め、その傷からおまえの病気をうつせ!」もうブブから逃れられない宿命をベルタは感じた。しかしベルタが患者収容施設に入ったとたん、文なしになったブブは盗みを働き、追ってきた警官に足を撃たれて逮捕された。それを聞いたベルタは病院を抜け出し、街をさまよったすえ、やはり娼婦の姉とヒモのガストンの部屋に仮住いをし、また夜の街角に立つようになった。しかしガストンの手を逃れるように、とび出したベルタの、最後のよりどころはピエロだった。ベルタはさびしく死んでいった父、そして“病気”の進行で痴呆のようになった姉の悲惨な姿に、新しい健康で明るい人生を決意した。二人は心から愛しあい、抱き合った。しかし、ベルタの不幸な宿命をかえることばできなかった。ピエロの部屋にブブと兄貴分のジュリオが突然踏み込んできたのだ。ナイフでおどされたピエロは、愛するベルタが連れ去られるのを、ただ黙って見ているより仕方がなかった。

「愛すれど哀しく」の解説

今世紀初頭に書かれたシャルル・ルイ・フィリップの小説「ビュビュ・ド・モンパルナス」の映画化。監督は「わが青春のフロレンス」のマウロ・ボロニーニ、脚本はボロニーニ、ジョルジョ・テストリ、マリオ・ディ・ナルドの共同執筆、撮影はエンニオ・グァルニエリ、音楽はカルロ・ルスティケリが各々担当。出演は「わが青春のフロレンス」の新人コンビ、オッタヴィア・ピッコロとマッシモ・ラニエリ、ほかにアントニオ・ファルジ、アンナ・ファッダ、ルイジ・プロイェッティなど。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1972年1月15日
キャスト 監督マウロ・ボロニーニ
原作シャルル・ルイ・フィリップ
出演オッタヴィア・ピッコロ マッシモ・ラニエリ アントニオ・ファルジ アンナ・ファッダ ルイジ・プロイェッティ
配給 東和
制作国 イタリア(1971)

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-03

”古風な女の哀れを、イタリアの叙情派マウロ・ボロニーニ監督が心を込めて描いた「愛すれど哀しく」”

可憐な洗濯女ベルタ(オッタヴィア・ピッコロ)は、パン屋の職人ブブ(アントニオ・ファルジ)を愛したばかりに、夜の女に転落する。

彼はヤクザ気取りの無知な若者だった。
今やヒモとなり、稼ぎが悪いと殴りつけもするのに、彼女は彼にしがみつく。
この恋しい男を、たとえ神様にだって渡すものかと思うのだ。

川端柳が揺れる踊り場の風景や、厚化粧の商売女が、自殺した仲間を送る、昼下がりの葬列、そして、女たちが客を奪い合う、雨の夜の街角。
20世紀初めの風俗描写は、匂いこぼれる懐古ムードだ。

最終更新日:2024-07-13 16:00:01

広告を非表示にするには