テオレマ 作品情報
ておれま
ミラノの郊外に大邸宅を構える、大工場主パオロ(マッシモ・ジロッティ)の家へ、ある日、配達夫(ニネット・ダボリ)によって、発信人のない一通の電報がとどけられた。電文は「明日着く」。翌日、パーティの席に、一人の見知らぬ青年(テレンス・スタンプ)がいた。妻のルチア(シルヴァーナ・マンガーノ)は不審に思ったが、青年はそのまま邸に住みついてしまった。それからというもの、邸にはある種、奇妙なムードが生れた。一家の者たちが熱病にかかったようになってしまったのである。まずエミリアが、その青年に対して激しい肉欲を感じ、そんな自分を恥じて自殺を図ったが、青年に救われた。そして、彼はエミリアをやさしく受け入れた。また、ルチアは別荘で猟犬と戯れる青年を見ながら、全裸になり、汗ばんだ青年の体を抱擁した。明け方、パオロはなにかに惹かれるように目をさまし、息子ピエトロ(アンドレ・ホセ・クルース)の寝室をのぞいた。一緒のベッドで熟睡する青年とピエトロ。パオロは自分のベッドにもどり、いつになくルチアの身体を求めた。その日から、パオロは病気になった。そんなある日、娘のオデッタ(アンヌ・ヴィアゼムスキー)は突然、青年を自分の室に導き入れ、その室で処女を与えてしまった。再び配達夫が邸を訪れると、青年は「明日立つ」と一家につげた。一家のものたちは、一人一人が青年に、自分の心情や変化を訴えるのだった。やがて青年は去って行った。その時から一家には激しい動揺がおきた。オデッタは青年を探すかのように邸をさまよい、ベッドの上で、原因不明の硬直状態に陥ってしまった。ピエトロは家を出て、狂ったように抽象画の製作に没頭。ルチアは色情狂のように街で若者を漁り、身をまかせたが、その後の虚しさに耐えかねて、野原に建つ、小さな教会の中に入っていった。青年が去った直後に暇をとったエミリアは、田舎に帰り村の広場で奇跡を起こした。そして、そのあと彼女は、工事現場の泥地の中に、自らを埋めてしまった。一方パオロは、工場のすべてを労働者に譲渡し、ミラノ中央駅の雑踏の中でひとりの青年に惹かれ、突然、公衆の面前で着衣を脱ぎ、全裸になってしまった。現代を象徴するかのような荒野。砂塵が吹きすさぶ彼方、一人の男が何かをさけびながら彷徨してくる。それは救いを求めるように天を抑ぎ、無機の荒野をあてどなく歩いて行く、パオロの姿だった。
「テオレマ」の解説
イタリア映画界というより、イタリア文化全体の異端児でありスキャンダリストであるピエル・パオロ・パゾリーニが、「アポロンの地獄」についで発表した作品。“聖性”をひめた青年の来訪によって家族全員がその青年と、性的に結びつき、崩壊にまでみちびかれてしまうブルジョワ家庭を描きながら、その寓話的語りのなかに現代への鋭いメッセージと、未来への啓示をこめている。監督・脚本・原作は前記のピエル・パオロ・パゾリーニ。撮影のジュゼッペ・ルゾリーニ、編集のニーノ・バラーリは「アポロンの地獄」のスタッフ。音楽は、「さらば恋の日」のエンニオ・モリコーネが担当。出演は「世にも怪奇な物語」のテレンス・スタンプ、「アポロンの地獄」のシルヴァーナ・マンガーノ、「ウィークエンド」のアンヌ・ヴィアゼムスキー、新人アンドレ・ホセ・クルース、「華やかな魔女たち」のマッシモ・ジロッティ、演劇界出身のラウラ・ベッティ、「アポロンの地獄」のニネット・ダボリなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1970年4月11日 |
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キャスト |
監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
原作:ピエル・パオロ・パゾリーニ 出演:テレンス・スタンプ シルヴァーナ・マンガーノ マッシモ・ジロッティ アンヌ・ヴィアゼムスキー アンドレ・ホセ・クルース ラウラ・ベッティ ニネット・ダボリ |
配給 | 東和 |
制作国 | イタリア(1968) |
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ユーザーレビュー
総合評価:4点★★★★☆、2件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-11-09
ミラノの大企業家パオロの家に、謎の青年がやって来る。
青年は、パオロやその家族と性的な接触を持ち、彼らの欲望を解放して、やがて立ち去る。
残された人々は、彼ら自身の真実に向き合うのだった。
彼に感化されたメイドは、屋敷を出て、聖女になり、パオロは、自分の工場を労働者に渡して、荒野をさまようのだった-------。
ピエル・パオロ・パゾリーニ監督は、最初このテーマを、詩による舞台劇として考えていたそうだ。
そのため、この映画は知的な構成が明らかすぎるほど明らかだ。
すみずみまで、よく計算されており、登場人物の役割も、わかりやすい。
だが、主人公が、神か悪魔かといった謎が、不条理演劇のように、簡単には割り切れないのだ。
それは、主人公のテレンス・スタンプの顔のクローズ・アップが、極めて映画的な効果をもたらしているからだ。
この映画は、映画史に残る、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の傑作のひとつだと思う。