黒い瞳(1987) 作品情報
くろいひとみ
アテネからイタリアへ向かう船の中。初老の紳士パヴェル(フセヴォロド・ラリオーノフ)は、まだ準備中のレストランでイタリア男と知り合い意気投合する。その男ロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)は新婚旅行中だというパヴェルに自分の恋の話を始めた。大学で建築学を学んでいたロマーノは、ローマ有数の大銀行家の一人娘エリザ(シルヴァーナ・マンガーノ)と結婚、25年の歳月を迎えた頃、彼女と大喧嘩し、家を出て湯治場へ行った。そこで小犬を連れたロシア女姓アンナ(エレナ・ソフォーノワ)と知り合い、2人の仲は急速に進展した。彼女は結婚していたが、夫を愛したことはないとロマーノに告白した。が、愛の一夜を過ごした翌日、アンナはロマーノに一通の手紙を残してロシアに帰ってしまった。ロシア語で書かれたその手紙が愛の告白であったことをやっと解読したロマーノは、彼女を追ってロシアに向かった。やっとの思いでアンナと再会し2人の生活を約束したロマーノは、身辺整理のためにローマに戻った。が、家に帰ってみると、エリザの家は破産し、「あなたしかいなくなった」と泣きながらロマーノを頼るエリザの姿を見て、ロマーノは、事実を告白できなくなってしまう。彼は元のさやに戻ったのだ。アンナとの約束は破って……。ロマーノのその話を聞いてパヴェルは驚き、彼に対して薄情だと批難した。彼は、今は落ちぶれてこの船でウェイターをしているのだった。甲板にはパヴェルの妻の姿があった。その顔は、光り輝くような笑みをうかべたアンナであった。
「黒い瞳(1987)」の解説
ロシア人の人妻に恋したイタリア男の悲喜劇を描く。製作はシルヴィア・ダミーコ、ベンディコ・カルロ・クッキ。アントン・チェーホフの短編を基に、「ヴァーリャ! 愛の素顔」のニキータ・ミハルコフが監督・脚色。共同脚本はアレクサンドル・アダバシャン、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、撮影はフランコ・ディ・ジャコモ、音楽はフランシス・レイ、編集はエンツォ・メニコーニが担当。出演はマルチェロ・マストロヤンニ、シルヴァーナ・マンガーノほか。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1988年1月30日 |
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キャスト |
監督:ニキータ・ミハルコフ
原作:アントン・チェーホフ 出演:マルチェロ・マストロヤンニ シルヴァーナ・マンガーノ マルト・ケラー エレナ・ソフォーノワ ピナ・チェイ フセヴォロド・ラリオーノフ インノケンティ・スモクトゥノフスキー オレーグ・タバコフ |
配給 | ベストロン映画 |
制作国 | イタリア(1987) |
上映時間 | 113分 |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-20
この映画「黒い瞳」の原作は、チェーホフの「小犬を連れた貴婦人」を基にしている。
チェーホフのこの原作は、今までにも映画化されていますが、この作品の監督ニキータ・ミハルコフは、原作にちょっとしたひねりをつけ、ほろ苦さのあるコメディに仕上げていると思う。
主人公のロマーノ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、ブルジョワの娘エリザ(シルヴァーナ・マンガーノ)と結婚してもう25年もたっている。
怠け者のロマーノは、もう何年も働かず怠惰な生活を送っている。
彼は、たまたま出かけた湯治場で、小犬を連れた貴婦人(エレナ・ソフォーノワ)を見かけ心を奪われる。
彼は、貴婦人の黒い瞳が忘れられず、ロシアへ帰った彼女の後を追って、かの地へと赴くのだ。
ストーリの骨組みはこのような内容ですが、この映画の見どころは、名優マルチェロ・マストロヤンニが扮するロマーノの駄目男ぶりだろう。
つまり、カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した、マストロヤンニのうまさが見どころになっていて、男のずるさ、いい加減さをたっぷりと、薄気味悪いほど見事に演じている。
一見にやけた二枚目にも見えるマストロヤンニですが、この人は意外と硬派な経歴を持っているんですね。 1923年生まれというから、世代的には戦中派で、実際、第二次世界大戦には出征し、イタリアが降伏した後は、北ドイツの強制収容所に入れられ、しかも、そこを脱走してヴェネチアへ逃げ込んだというから凄い。 この「黒い瞳」は、広大なロシアの風景も見どころにもなっていて、撮影は、イタリアと当時のソ連で行なわれ、ソ連ではレニングラード、ボルガ地方、ラドガ湖近辺で行なわれたそうです。 ロマーノの馬車が、ロシアの草原でジプシーの馬車と出会うシーンは、ことのほか美しく、フランシス・レイの流麗な音楽も、実に効果的だ。 ラストシーン近くでロマーノが、「今死んで、神様に何か聞かれたら、何も答えるものがない。子供の頃、母が歌ってくれた子守唄と、エリザの初夜の表情、そしてロシアの霧だけだ。」と、こんなことを言って目に涙をためる。 マルチェロ・マストロヤンニという俳優は、本当に人間の喜怒哀楽を巧みに演じる、見事な名優だと思いますね。