追想(1975) 作品情報

ついそう

一九四四年、ドイツ占領下フランスの小都市モントバン。町の病院に勤務する外科医ジュリアン・ダンデュ(フィリップ・ノワレ)は、美しい妻クララ(ロミー・シュナイダー)、娘フロランス(カトリーヌ・デラポルテ)、母(マドレーヌ・オーズレー)の四人でつつましくも平和な家庭を築いていた。しかし戦争の暗雲は容赦なくこの静かな町にもたれ込み始め、連合軍の上陸に備えるべく、ドイツ軍は親衛隊を先頭に全市町村の掃討作戦を開始した。ジュリアンの病院にも連日ドイツの傷痍兵やテロリストの重傷者が担ぎ込まれてきた。家族の身を案じたジュリアンは、同僚であり友人でもあるフランソワ(ジャン・ブイーズ)の勧めもあって、クララとフロランスを自分の城のあるバルベリー村へ疎開させることにした。それが悲劇の発端だった。妻子と別れてから五日、彼は無性に二人に会いたくなった。戦時下とは思えない南フランスの緑豊かな風景を横に見ながら彼は車をとばした。城は村はずれの絶壁にいつもと変わらぬ偉容を誇り、聳え立っていた。宿舎の部屋には妻と娘の姿は見当らない。礼拝堂には老若男女村人全員の射殺死体が転がっていた。地獄のきわみともいえる殺害現場に思わず嘔吐するジュリアン。彼は城の中庭へ走った。そこにはフロランスが血に染まって倒れ、そのそばに黒こげの死体が転がっていた。ドイツ軍の集団暴行を受け、火炎放射器で焼き殺された最愛の妻の無残な姿、そして娘の惨殺死体。彼は勝手知った城の秘密通路を通り、隠してあった一挺のショットガンをとり出した。そして橋桁をはずして城館を孤立させた。地下室のワインを呷りジュリアン一家の幸福だった頃のホーム・ムービーに歓声をあげるドイツ兵。それをマジック・ミラーの奥から涙にむせびながら身を震わせて凝視するジュリアン。クララとフロランスの楽しかった頃の想い出が走馬燈のように胸裡をかけめぐる。ビリアッツの休暇でクララと初めてあった日のこと、妻と別れた直後、母の愛に飢えていたフロランスはたちまちクララになつき、仲のいい姉妹のようだった。永遠の愛を誓い、周囲に祝福されての再婚。フロランスの洗礼式、そして小学校の卒業式。ジュリアンは神出鬼没の行動で整然とドイツ兵を粛清していった。本隊への合流を急ぐあまり車もろとも橋桁と転落死するもの。ロープを伝って逃げようとして狙撃されるもの。城の地下で水責めにされるもの……。残るは隊長(ヨアヒム・ハンセン)ただ一人になった。ジュリアンの怒りの火炎放射器が彼に向けられた。同時に城も炎に包まれた。ナチス・ドイツによる犠牲者たちを弔うかのように立ち昇る黒煙。慰めにかけ寄るフランソワの言葉も上の空、放心したように遥か彼方を見つめるジュリアンの瞳には、しかし複雑な笑みが浮かんでいた。

「追想(1975)」の解説

第二次世界大戦末期、ナチ親衛隊に最愛の妻と妹を虐殺された医師の凄まじい復讐を描く。製作はピエール・カロ、監督は「ラムの大通り」のロベール・アンリコ、原案はアンリコとパスカル・ジャルダン、脚本はジャルダンとクロード・ヴェイヨ、撮影はエティエンヌ・ベッケル、音楽はフランソワ・ド・ルーベ、編集はエバ・ゾラが各々担当。出演はロミー・シュナイダー、フィリップ・ノワレ、ジャン・ブイーズ、マドレーヌ・オーズレー、ヨアヒム・ハンセン、ロバート・ホフマン、カトリーヌ・デラポルテなど。2017年9月9日よりデジタルリマスター版を全国順次上映(配給:コピアポア・フィルム)。

1975年に日本公開された、「冒険者たち」のロベール・アンリコ作品をデジタルリマスター。1944年、ドイツ占領下のフランス。ドイツ軍親衛隊による掃討作戦から逃れるため田舎に疎開させた妻子が惨殺された外科医ジュリアンは、ドイツ兵に復讐していく。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1976年3月13日
キャスト 監督ロベール・アンリコ
出演ロミー・シュナイダー フィリップ・ノワレ ジャン・ブイーズ マドレーヌ・オーズレー ヨアヒム・ハンセン カトリーヌ・デラポルテ
配給 ユナイト
制作国 フランス(1975)
上映時間 101分
公式サイト http://www.tsuisou.com/

(C) 2011 – LCJ Editions et Productions. ALL RIGHTS RESERVED.

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、6件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-07-14

この映画は、戦争の無残さを人間の尊厳を賭けた一人の男を通して描いた、ロベール・アンリコ監督の映画史に残る不朽の名作だと思います。

1975年製作のフランス映画「追想」は、原題を"古い銃"と言い、永遠の青春レクイエムの名作である「冒険者たち」のロベール・アンリコ監督の映画史に残る名作で、フランスのアカデミー賞に相当する、第1回セザール賞の最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(フィリップ・ノワレ)、最優秀音楽賞(フランソワ・ド・ルーベ)を受賞していますね。

クエンティン・タランティーノ監督が「イングロリアス・バスターズ」で、この「追想」にオマージュを捧げて撮ったのはあまりにも有名な話ですね。

映画の冒頭で描かれるフランスの田舎の一本道を、親子三人が自転車で走るのをスローモーションで捉えた、ソフトで心温まるシーンからすでに「冒険者たち」で魅了したロベール・アンリコ監督独特の映像美の世界にすっと引き込まれてしまいます。

最終更新日:2024-07-24 16:00:02

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