P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-17
お馴染みのジェームズ・ボンドシリーズの第14作「007 美しき獲物たち」。
パリからサンフランシスコ、サンノーゼへ飛んで、007一流の痛快なアクションが展開する。
ナチの狂気の優性手術で生まれた男が、KGBと結びつき、巨大な陰謀を企んでいる。
シリコンバレーを湖の底に沈め、マイクロチップの世界市場の独占を狙っているのだ。
物語りの設定はさておいて、追いつ追われつの危機一髪の面白さこそ、このシリーズのお楽しみの目玉だ。
その点、この映画では、ジェームズ・ボンド自身が、体を極限まで駆使して、危機を切り抜ける。
SF的な小道具をひけらかす、小賢しきアクション乱立に訣別して、7の本道に戻ったあたり、アルバート・ブロッコリー、さすがに世紀の大製作者だけのことはある。
スキーの追跡、カーアクション、エッフェルや飛行船のぶら下がり、「ベン・ハー」並みの馬術競技、金門橋のクライマックスと、ボリュームいっぱいの大サービスだ。
ところが、この映画、その割にはなぜか印象が薄いのだ。
007=ロジャー・ムーアのお歳のせいか、ジョン・グレン監督の演出のせいか。
いやいや、悪役のクリストファー・ウォーケンに、もっさと狂気の凄みが欲しかった。 そして、問題なのは、入れ替わり、立ち替わり登場する美女たちの、一体誰がヒロインなのか、例え一時的なお相手であっても、美しいだけの人形ばかりじゃ、結局、飽きてしまうのだ。 悪の女ガードマン役のグレース・ジョーンズが個性の強烈さで、孤軍奮闘。 どんなに派手なアクションも、スケールの大きな物語も、人物がきちんと描かれていないと、血を湧きたたせてくれないのだ。 このように、厳しく言うのも、007シリーズへの深き信頼から出た期待からだ。 並みのアクション映画が足元にもよれるものではない。 特にこの映画で、我々を驚かせるのは、スタント・プレイの凄さ。 それまでは想像も出来なかった、危険なスタントを、人力ギリギリの限界まで見せてくれる。 SFXのトリックショットやCGも結構だが、我々と同じ生身の人間、その危機への挑戦は、やっぱり何とも血が燃えるんですね。