蜘蛛女のキス 作品情報
くもおんなのきす
南米の刑務所の監房の中。そこに二人の男が同じ房に入れられていた。ひとりは政治犯のバレンティン(ラウル・ジュリア)で偽造パスポートを使おうとして現場を押えられたのだった。もう一方のモリーナ(ウィリアム・ハート)はホモセクシュアルで風紀罪に問われて刑務所入りとなったのだった。同房に居合せながらまったく別の世界をもつ二人。映画好きのモリーナは、いつか見た映画の話をバレンティンに語り聞かせている。しかし、バレンティンはその話にうんざりしており、同志と全く連絡もとれず茫然とただ時を過ごす毎日だった。第2次大戦ナチ占領下のパリ、美人シャンソン歌手レニ(ソニア・ブラガ)と青年ドイツ将校の恋--それがモリーナの今語っている映画の内容だった。バレンティンにもかつては愛する女がいた。政治家とゆ着する大資本家の娘(ソニア・ブラガ2役)で、反体制活動家の彼は、活動を続けるために彼女を捨てて旅立ってしまったのだ。ある日、モリーナは、所長の部屋に呼ばれた。実は、モリーナは、バレンティンの地下活動を探るために同房に入れられていたのだった。うまくいけば刑をまぬがれることができるのだ。しかし機密を聞きだすためのバレンティンへの献身工作はいつしか愛情へと変わりつつあり、バレンティンを騙しているという自責の念にかられていた。そうとは知らないバレンティンも、次第にモリーナの愛情を感じるようになってゆく。一方、向いの房に入れられていた顔をおおわれた男が、バレンティンには気になっていた。たえず拷問をうけていた彼は遂に死んだ。バレンティンは、さらされた彼の顔を見て驚いた。なんと、思想家のリーダー・アメリコ博士で、以前、偽パスポートでバレンティンが国外に逃亡させようとして失敗したのは、このアメリコだったのだ。落胆するバレンティン。そのことを所長に告げたモリーナ。そのためにモリーナの釈放が決まった。バレンティンは、出てゆくモリーナに重大なメッセージを頼んだ。使命感に燃えるモリーナは元の街に戻った。母親や友人たちとの久びさの対面のあと、彼は、バレンティンから頼まれた電話番号を回した。約束の場所と時間に出むいたモリーナ。彼は、銃声のもとに倒れるのだった。そのころ、房のバレンティンは、モリーナの語る映画の中にいた。南洋の海辺で愛する女とボートにのる彼……。
「蜘蛛女のキス」の解説
ファシズムが台頭する南米のある国を舞台にテロリストとホモセクシュアルの交流を描く。製作はデイヴィッド・ワイズマン。エグゼキュティヴ・プロデューサーはフランシスコ・ラマリオ・ジュニア。監督はヘクトール・バベンコ。マヌエル・プイグの同名原作(集英社)を基にレナード・シュレイダーが脚色。撮影はロドルフォ・サンチェス、音楽はジョン・ネシュリング、美術はクローヴィス・ブエノが担当。出演はウィリアム・ハート(85年カンヌ映画祭男優賞/86年米アカデミー賞男優賞受賞)、ラウル・ジュリア、ソニア・ブラガなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1986年7月26日 |
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キャスト |
監督:ヘクトール・バベンコ
原作:マヌエル・プイグ 出演:ウィリアム・ハート ラウル・ジュリア ソニア・ブラガ ホセ・レーゴイ Nuno LealMaia Denise Dumont Milton Goncalves |
配給 | ヘラルド・エース=デラ・コーポレーション=日本ヘラルド |
制作国 | ブラジル アメリカ(1985) |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-12-12
この映画「蜘蛛女のキス」は、1985年度のアカデミー賞とカンヌ国際映画祭で、ウィリアム・ハートが主演男優賞を受賞した作品で、監房の中で芽生えた、男同士の恋愛物語だ。
この映画の舞台は、ファシズムが支配している南米の監房。
政治犯のヴァレンティンは、現実主義者。
同室のホモセクシャルのモリーナの優しさに触れるうちに、ヴァレンティンの心に、今までにないような感情が芽生えていく。
水と油のようだった二人が、次第に打ち解け合っていく様子、そして意外なラストのどんでん返しが胸を打つ秀作だ。
ホモセクシャル役のウィリアム・ハートが、どう見ても男にしか見えない風貌なのに、物腰や口調を柔らかくし、見事に女性になりきろうとしている男性を演じて、見事の一語に尽きる。