エル・スール 作品情報

えるすーる

エストレリャ(イシアル・ボリャン)が、父アグスティン(オメロ・アントヌッティ)がもう帰ってこないと予感したのは15歳の時、1957年の秋の朝、枕の下に小さなまるい黒い箱を見つけた時だ。その中には父が愛用していた霊力のふりこがのこされていた。エストレリャが7歳か8歳の頃(ソンソレス・アラングーレン)、一家は“かもめの家”と呼ばれる郊外の一軒家に住むことになった。父は、家の前の道を“国境”と呼び、バイクに乗せてくれる。そして、水脈を発見する奇跡を行なって村人に尊敬される父。そんな父と一緒にいられることだけで嬉しいエストレリャ。母フリア(ロラ・カルドナ)は、かつて教師だったが、内戦後に教職を追われ、家にいて読み書きを教えてくれる。冬の雪の日、南では雪は降らないと母に教えられ、エストレリャは南に想いをはせる。父は南の出身だが、祖父と大喧嘩をして北へ出たのだ。5月になって南の人が訪れてきた。アグスティンの母ドナ・ロサリオ(ジェルメーヌ・モンテロ)と乳母ミラグロス(ラファエラ・アパリシオ)だ。エストレリャの初聖体拝受式の日の朝。教会には父は来てくれないだろうとエストレリャが諦めかけた時、アグスティンが教会の入口にいるのに気がつく。式の後、祝宴で南の曲“エン・エル・ムンド”にのって、エストレリャは父と共に、パソ・ドブレを踊った。その日、陽気に、南に帰ってゆく祖母とミラグロス。やがて、エストレリャは父がイレーネ・リオス(オーロール・クレマン)という女優を想っていたことを知る。父は、映画館でイレーネ主役の「日かげの花」に見入る。内戦の頃に別れたかつての恋人で、本名をラウラという。彼女を未だに思っているのか。アグスティンはラウラに手紙を書くが、その返事は辛らつなものだった。「8年前に別れて以来、未来に生きる決意をし、女優をやめて一年になるのに、なぜ今さら手紙など……」最後の一行がアグスティンの胸を打つ。「今でも夜の来るのが恐い……」。アグスティンが最初の家出をしたのはそんな事があった直後だった。15歳に成長したエストレリャ。孤独に沈みがちな父。クランド・ホテルで食事に誘ってくれた時、それが最後になるとは思っていなかった。隣りのサロンでは、新婚を祝って、あの“エン・エル・ムンド”のメロディーが流れていた…。

「エル・スール」の解説

父を自殺で失った少女が父との想い出を回想し、やがて旅立つまでを描く。製作はエリアス・ケレヘタ、アデライダ・ガルシア・モラレスの原作を基に「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセが監督・脚本。撮影はホセ・ルイス・アルカイネ、美術はアントニオ・ベリソンが担当。出演はオメロ・アントヌッティ、イシアル・ボリャンなど。1985年10月12日より劇場初公開(配給:フランス映画社)。ミニシアターの傑作上映企画『the アートシアター』として、2017年3月25日より再上映(配給:アイ・ヴィー・シー)。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1985年10月12日
キャスト 監督ビクトル・エリセ
原作アデライダ・ガルシア・モラレス
出演オメロ・アントヌッティ ソンソレス・アラングーレン イシアル・ボリャン ロラ・カルドナ ラファエラ・アパリシオ マリア・カーロ ジェルメーヌ・モンテロ オロール・クレマン フランシスコ・メリーロ
配給 フランス映画社
制作国 スペイン フランス(1983)
上映時間 95分
公式サイト http://the-art-theater.com/

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「振り子のレッスン~スペインは少女の魂~」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-22

以前から気になってはいた作品。やっと、タイミングが合いました。

スペインは少女の夢で出来ていると言っても過言では無いでしょう?

少女の夢と言っても、ただ夢を見るだけではなく、実現すること。

男と言う生き物は、時に、過去の記憶を後生大事にする。

が、女性と言うのは、大方、今を生きる生き物である。

父親は、大切な魂を記憶に費やし、

一方、娘は、これからの人生を夢見て歩み出す。

振り子と言うのは、一種の比喩であり、誰もが、自転車の補助輪を外し動き出す為の手段。

あなたは、振り子と言う補助輪を外し、内なる振り子を指針に人生を歩まなければならない。

記憶に生きるのではなく、自らの振り子のエル・スール、指南書を胸に歩まねばならない。

スペインにも一番、必要な作品かも知れません?

最終更新日:2024-07-26 02:00:04

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