メル・ブルックスの大脱走 作品情報
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ナチ・ドイツが破竹勢いだった1939年8月。ワルシャワのブロンスキー劇場では、フレデリック・ブロンスキー(メル・ブルックス)が愛妻のアンナ(アン・バンクロフト)とともに華やかに踊り歌って喝采を浴びていた。アンナには熱狂的なファンである空軍パイロットのアンドレ・ソビンスキー中尉(ティム・マシスン)から毎日のように花束が届けられた。ヒトラーを諷刺した寸劇が当局から禁止され、フレデリックは「ハムレット」のさわりシーンを演じることにした。名文句の「生か、死か」を始めると、客席からアンドレが立ちあがり、フレデリックはくさる。アンドレはこの台詞をきっかけに、アンナの楽屋へ行き彼女と密会していたのだ。ついにドイツが国境を越えてポーランドに侵入し、占領してしまう。アンドレはイギリスに渡り、英軍基地につめていた。ポーランドの名士シレッツキー教授(ホセ・フェラー)が帰国するので、歓送会が開かれ、イギリス駐留のポーランド軍人たちは教授に、地下組織にいる仲間や家族たちへの手紙を託した。アンドレもアンナ宛に「生か、死か」の台詞を託したが、教授があの有名なアンナのことを知らなかったことから、教授を疑い出す。もし教授がドイツのスパイだったら、地下組織は壊滅だ。アンドレは帰国することにした。その頃、ブロンスキー邸はゲシュタポに接収され、夫妻はアンナの付き人サーシャのアパートに同居していた。教授はアンナを呼び出し、台詞の意味を聞き出すと、彼女をものにしようと迫ってくる。教授がゲシュタポのボス、エアハルト大佐(チャールズ・ダーニング)に会って、地下組織のリストを手渡すことを知ると、それを奪取することになった。劇場をゲシュタポ本部に仕立て、フレデリックが大佐に化けて、リストを受け取る。しかし、その変装がふとしたことでばれ、銃撃戦の末、教授は死亡。死体は衣裳かばんに隠された。次にフレデリックは教授に化けて、大佐と会う。その後、教授の死体が発見され、エアハルトはフレデリック扮する教授を呼び出して問いつめようとするが、フレデリックの機転で難を逃れる。ヒトラーがポーランドにやってきて、ブロンスキー劇場で歓迎の芝居をやることになった。そこで芝居を利用して、劇団員や劇場の地下に隠れていたユダヤ人たちは国外に脱出することにした。フレデリックがヒトラーに化けたりして、ドイツ軍をあざむき飛行場へ。あやういところで離陸に成功。イギリスに無事につきフレデリックはシェークスピアの本場で、ハムレットを演じることになって胸わくわく。ところが、例の「生か、死か」のところにくると、アンドレではない別の男が席を立って出ていったのである。 (フォックス配給*一時間四八分)
「メル・ブルックスの大脱走」の解説
ポーランドのヴォードヴィル一座がドイツ軍重包囲の中を国外脱出するまでを描く喜劇。42年にエルンスト・ルビッチが監督した「生きるべきか死ぬべきか」(「お芝居とスパイ騒動」の題でTV放映されている)のリメイク。製作・主演はメル・ブルックス。エグゼクティヴ・プロデューサーのハワード・ジェフリー。監督は長年、メル・ブルックの映画(「ヤング・フランケンシュタイン」「メル・ブルックス 新サイコ」等)の振付を担当し、この映画が監督デビュー作となるアラン・ジョンソン。脚本はトーマス・ミーハンとロニー・グラハムムが執筆。撮影はジェラルド・ハーシュフェルド、音楽はジョン・モリス、衣裳はアルバート・ウォルスキーが担当。出演はブルックスの他に、実生活でブルックス夫人であるアン・バクロフト、ティム・マシスン、チャールズ・ダーニング、ホセ・フェラー、クリストファー・ロイドなど。ドルビー・ステレオ。日本版字幕は戸田奈津子。デラックスカラー、ビスタサイズ。1983年作品。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1984年5月19日 |
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配給 | 20世紀フォックス |
制作国 | アメリカ(1983) |
上映時間 | 107分 |
ユーザーレビュー
総合評価:4点★★★★☆、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-12-15
才人メル・ブルックスが、製作と出演のみに専念した「メル・ブルックスの大脱走」は、エルンスト・ルビッチ監督の「生きるべきか死ぬべきか」のリメイク作品だ。
ルビッチは、倫理コードの厳しさを逆手に取り、セックスを暗示的に描くのが得意で、その洗練を極めた演出は、ルビッチ・タッチと呼ばれたものだ。
この二人には幾つも共通点があって、ユダヤ人であること、喜劇役者から監督に転じたこと、監督となってからも喜劇ばかりを手掛けたこと。
これがブルックスをして、ルビッチ作品のリメイクを思いつかせた理由だろう。
ほとんど欠点のない、完璧な映画がオリジナルなので、なぞっただけでも面白くなるのだが、ブルックスらしいアクの強いギャグを詰め込んだこの作品も、かなりいい線をいっていると思う。