陽のあたる場所 作品情報
ひのあたるばしょ
ジョージ・イーストマン(モンゴメリー・クリフト)は野心に燃える青年だった。母子2人きりの貧しい家に育ち、シカゴのホテルでボーイをしていたが、ウォーソーの町で水着製造工場を経営している伯父のチャールズ・イーストマンに会い、幸い彼の工場に職を得た。伯父の邸で社交界の花アンジェラ・ヴィカース(エリザベス・テイラー)に会い、心を惹かれたが、ジョージにとっては、身分違いの遠い存在に思えた。ジョージと同じ職場にいたアリス・トリップ(シェリー・ウィンタース)は、身よりのない娘で、ある夜映画館でふと隣合わせになったことから、2人の仲は急に深まった。会社では男女社員の交際が御法度になっていたので、2人は人目を忍んで逢瀬を楽しまねばならなかった。ジョージは伯父の邸のパーティに招かれ昇進の機会を与えられて、アンジェラと再会した。彼女はジョージの純真さに惹かれた。その日はちょうどジョージの誕生日だった。アリスは下宿でささやかな祝宴の準備をして待ちかねていた。彼女は妊娠していたのである。思い余ったジョージは彼女に堕胎をすすめたが、医者は引き受けてくれなかった。アンジェラとジョージは、ますます愛し合うようになり、2人は夏をアンジェラの別荘に過ごした。アンジェラの両親も2人の仲を許し、2人は許婚同様の間柄となったが、ある夜ジョージの元にアリスが電話をかけてよこした。彼は母の急病と偽って別荘を出、アリスと会った。彼女は結婚を迫り、承諾しなければ自分との間を公にすると脅した。翌日ジョージは出世の妨げになるアリスを溺死させようという下心から彼女を湖に誘った。だがアリスのひたむきな愛情を知った時、ジョージは、彼女を溺死させる気持ちを失った。アリスはジョージの底意を感じとって恐怖にかられ、ボートの上に立ち上がったため、ボートは転覆して、アリスは溺死し、ジョージは岸に泳ぎついた。次の夜、ジョージは捕まった。裁判が開かれジョージは殺意のあったことを認めたが、犯行は否定した。しかし陪審員は彼を有罪として、死刑が宣告された。刑執行の直前、ジョージを訪ねたアンジェラは彼に永遠の愛を誓うのだった。
「陽のあたる場所」の解説
セオドア・ドライサーの原作小説「アメリカの悲劇」の映画化(2度目。前作はジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督)で、「ママの思い出」のジョージ・スティーヴンスが製作及び監督に当たった1951年作品。「勇者のみ」のハリー・ブラウンとマイケル・ウィルスンが脚色し、撮影はウィリアム・C・メラー(「シンガポール珍道中」)、作曲はフランツ・ワックスマン(「青いヴェール」)の担当。主演は「赤い河」のモンゴメリー・クリフト、「緑園の天使」のエリザベス・テイラー 、「その男を逃すな」のシェリー・ウィンタースの3人で、アン・リヴィア「永遠のアンバー」、新進キーフ・ブラッセル、フレッド・クラーク、レイモンド・バー、ハーバート・ヘイスらが助演する。なお本作品は、51年度アカデミー監督賞、脚色賞、黒白撮影賞、作曲賞、編集賞、編集賞、黒白衣装デザインと6つのオスカーを獲得した。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:ジョージ・スティーヴンス
原作:セオドア・ドライサー 出演:モンゴメリー・クリフト エリザベス・テイラー シェリー・ウィンタース キーフ・ブラッセル フレッド・クラーク レイモンド・バー ハーバート・ヘイス シェパード・ストラドウィック フリーダ・イネスコート キャスリン・ギヴニー ウォルター・サンド テッド・デ・コルシア ジョン・リッジリー Lois Chartrand William Murphy ダグラス・スペンサー チャールズ・デイトン ポール・フリーズ |
---|---|
配給 | パラマウント日本支社 |
制作国 | アメリカ(1951) |
上映時間 | 123分 |
動画配信で映画を観よう! [PR]
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-13
エリザベス・テイラーとモンゴメリー・クリフトの呼吸がピッタリで、いかにもハリウッド映画らしい華やかさと社会性が楽しめる作品だ。
脚本、撮影、作曲、編集、衣裳部門のアカデミー賞を受賞しながら、主演の二人に与えられなかったのが信じられない。
特に、クリフトのナイーヴな演技は胸を打つ。
資本主義社会における貧しい者のつらさを知って育った青年が、やっとつかんだ出世の糸口を離すまいとする切ない心情を、クリフトは実にうまく演じていると思う。
そして、テイラーの役が単なる令嬢ではなく、上流階級の欺瞞を告発する立場で描かれているのもいい。
結局、この青年は、社会の組織に嵌められたようなものだが、そこをメロドラマにすり替えたところが、ジョージ・スティーヴンス監督らしい職人芸だと思う。