バンド・ワゴン(1953) 作品情報

ばんどわごん

ダンス映画でその名を謳われたトニイ・ハンター(フレッド・アステア )も、いまや自分の人気が下り坂になったことを悟らねばならなかった。そこへブロードウェイ時代からの親友レスター(オスカー・レヴァント)とリリー(ナネット・ファブレイ)のマートン夫妻が、とくにトニイのためにミュージカル・コメディを書きあげたからといって、しきりに誘いをかけて来た。トニイは舞台に自信がもてずためらったが、やはりニュー・ヨークへ行く決心をした。マートン夫妻の新作は、「バンド・ワゴン」といったが、かれらの売り込みに乗って来たのは、高尚な芸術を目指すジェフリイ・コードヴァ(ジャック・ブキャナン)という男で、彼は「バンド・ワゴン」を「ファウスト」の近代的音楽劇化に折込もうとした。これを知ってトニイやマートン夫妻はがっかりしたが、ジェフリイが説得上手のうえに金蔓もにぎっているので、彼のアイディアをそのまま受け入れることにした。ジェフリイはトニイの相手役に意表をついてクラシック・バレエの新星ガブリエル“ギャビイ”・ジェラード(シド・チャリシー)を選んだ。トニイとギャビイは新しい仕事への不安で、初めから喧嘩をしたが、ある夜、2人だけで語り合い、お互いの誤解やわだかまりもすっかり解けた。いよいよ芸術的「バンド・ワゴン」はニュー・ヘヴンで幕をあけたが、ジェフリイのあまりにも現代ばなれしたアイディアのため、興行は惨々な失敗に終った。だがトニイやマートン夫妻は自分たちの「バンド・ワゴン」をあきらめなかった。トニイは今度の失敗はジェフリイが楽しさを盛り込むことを忘れたためだと考え、踊りや歌に明るく楽しい創意を加えたショウに作りあげた。そして公演のために、トニイは自分の秘蔵の絵画をみんな売り払った。自分の非をみとめたジェフリイもこの新しいショウに参加することになった。トニイたちはニューヨーク公演に大事をとって、まず地方都市を打って回った。この巡業中、トニイのビャビイを愛する気持ちは次第につのっていったが、彼はこれを自分の胸一つにおさめ、淋しくあきらめていた。しかし、ギャビイも心秘かにトニイを愛していたのだ。ブロードウェイの披露公演は大成功だった。そのお祝いのパーティで、ギャビイはトニイに愛を打ち明け、トニイの喜びは絶頂に達した。

「バンド・ワゴン(1953)」の解説

「巴里のアメリカ人」のコンビ、製作アーサー・フリード、監督 ヴィンセント・ミネリの手になるテクニカラーのミュージカル1953年作品である。主演は「イースター・パレード」のフレッド・アステアと「雨に唄えば」のシッド・シャリッシという新チーム。オリジナル・シナリオは「雨に唄えば」のライター・チーム、ベティ・カムデン=アドルフ・グリーンの共作で、音楽監督は、「ショウ・ボート(1951)」のアドルフ・ドイッチェ、撮影は「彼女は2挺拳銃」のハリイ・ジャクスンの担当。歌曲はハワード・ディーツ作詞、アーサー・シュワルツ作曲で、ミュージカル場面の振付にはマイケル・キッドがあたった。アステア、チャリッシをめぐって、オスカー・レヴァント(「巴里のアメリカ人」)、ブロードウェイのミュージカル・スタア、ナネット・ファブレイ、ジャック・ブキャナンらが助演。

公開日・キャスト、その他基本情報

配給 MGM映画会社
制作国 アメリカ(1953)
上映時間 112分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、4件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-05-20

なぜ? が許されない何でもありのミュージカルの世界であってみれば、観る者はただ、アステアがすべてを肯定するように、軽やかにタップを踏むたびに訪れてしまうに違いない、この世ならぬ幸福に身を任せればいいんですね。

そしてまた、その幸福な記憶はあくまでハリウッド全盛時代のスタジオ・システムの産物であったミュージカル映画が、やがて衰退の運命を辿った後も、「女は女である」のゴダールは言うに及ばず、ジョン・ヒューストンの「アニー」やら、はたまた「ロッキー・ホラー・ショー」に至るまで幾多の映画作家の手によってスクリーンの中に蘇ることになるんですね。

最終更新日:2024-05-30 16:00:01

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