断崖(1941) 作品情報
だんがい
英国社交界の人気者ジョニイ・アイガースは学生時代から詐欺常習者だったが、さすがに相思の娘リーナ・マクレイドロウとかけ落ちするときは真剣だった。リーナはジョニイが無一文であることを知り、熱心に仕事をもつことを勧め、その結果彼は従弟の財産を管理するが、やがてリーナは彼が従弟の財産を使いこんでいることを知り非常な衝撃を受ける。続いて彼は友人のビーキーを唆かし土地に投資させるが、彼女はジョニイがビーキーの金を自由にした上で彼を殺すのではないかと憶測する。ジョニイはパリへ出発するビーキーを見送ってロンドンに行くが、ビーキーはパリで死亡する。リーナはジョニイを疑っていたが、帰宅した彼の口振りから彼女の恐ろしい疑惑はいよいよ深まるばかりだった。やがてリーナは彼が保険金ほしさに自分を殺そうとしていると信じ始める。そして彼が友人の殺人小説の著者イソベル・セドバスクから劇毒薬の秘密を探り出そうとしているのをみて、ますますその疑念を深める。その夜、彼女はジョニイの勧める一杯のミルクを飲む気になれず、翌朝母親を訪ねるのだといってジョニイから逃れようとするが、彼はリーナを自動車で送ろうといいはる。車が危険な個所に近づいたとき、彼の乱暴な運転ぶりにたまりかねた彼女は車から飛び降り逃れようとするが、ついにジョニイに追いつかれてしまう。しかしそこで彼女がジョニイから聞いたのは意外な告白だった。彼はビーキーとパリへ同行したのではなく、使いこんだ金の穴うめに金策に奔走していたが思うようにゆかなかったので、自殺の決意をして毒薬の秘密を探っているのだった。リーナの驚愕と悔恨は激しかった。彼女は疑惑の影が再び二人の愛情をむしばむことのないような生活をやり直そうと熱心にジョニイを説得し、ついに彼の心を動かしたのだった。
「断崖(1941)」の解説
原作はアントニー・バークリーとして知られた英国探偵作家が、 フランシス・アイルズの名で発表した推理小説「レディに捧げる殺人物語」より、「極楽特急」「陽気な中尉さん」「メリイ・ウイドウ(1934)」のサムソン・ラファエルソン、「ファントム・レディ」「アンクル・ハリイの奇妙な事件」の製作者であり「ダーク・ウオータース」の脚色者たるジョーン・ハリソン女史、監督ヒッチコックの妻であり彼の「孤独の女」等を脚色した英国の女流作家アルマ・レヴィルの三人が脚色し「レベッカ」「疑惑の影」「スペルバウンド」「ノートリアス」等のアルフレッド・ヒッチコック監督作品。撮影は「女だけの都」を撮ったのちアメリカに渡り、「ドリアン・グレイの肖像」で1945年アカデミイ撮影賞を受けたハリー・ストラドリング、音楽は「リリオム」「激怒」「スケフィシトン氏」のフランツ・ワックスマンが当たった。主演は「コンドル(1939)」「この虫10万ドル」「愛のアルバム」等のケーリー・グラント、「ガンガ・ディン」「レベッカ」「コンスタント・ニンフ」「ジェーン・エア」等のジョーン・フォンテーンで、彼女はこの映画で1941年度アカデミー主演女優賞を得た。助演には「大国の鍵」のサー・セドリック・ハードウィック、「小麦は緑」のナイジェル・ブルース、「肉体と幻想」のディム・メイ・ホイッティ、「フールス・フォア・スキャンダル」の英国女優イサベル・ジーンス、「救命艇」のヘザー・エンジェル、英国の作家であり舞台演出家でもあるオリオール・リイ等が顔をそろえている。
公開日・キャスト、その他基本情報
制作国 | アメリカ(1941) |
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上映時間 | 99分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、3件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-03-07
この映画「断崖」は、夫に殺されるかもしれないという、人妻の心理の襞を、アルフレッド・ヒッチコック監督が、繊細に物語る作品だ。
原作は、英国の推理作家フランシス・アイルズの「犯行以前」。
初めヒッチコック監督は、同じ作者の医師が妻を殺そうと、あの手この手を考える倒叙形式のスリラーの「殺意」を映画化しようと考えていたが、「私が作ってしまうと、あまりに恐ろしいものになってしまいそうだ」と、これを諦め、逆に被害者の視点で犯罪を描く、この作品を手掛けることになったそうだ。
人妻のジョーン・フォンテーンを追い詰める、ケーリー・グラントが、虫も殺せそうもない伊達男ぶりなのが、とてもいい。
妻の元へ運ぶ毒入り(?)ミルクの効果を際立たせようと、豆電球をミルクの中に入れて、暗闇の中にボーッと浮かび上がらせた演出は、ヒッチコック監督ならではの工夫が見られて素晴らしい。