スローターハウス5 作品情報

すろーたーはうすふぁいぶ

ビリー・ビルグリム(マイケル・サックス)は第二次世界大戦で戦い、戦後はアメリカの中産階級の一員として人並みの成功をおさめた平凡な男だが、一つだけ彼には常人と違うところがあった。時間を超越して彼の意志とは関係なく、過去や未来や現在を自由にとびまわるのだ。ある朝、トラルファマドア星にガールフレンドのモンタナ(ヴァレリー・ペリン)といっしょにいたかと思うと、次の瞬間には第二次世界大戦でのドイツ軍陣地に引き戻されている、といった具合なのだ。ビリーはいま、一人我が家でその悩みをタイプに打ちつけていた。家の外では訪ねて来た娘のバーバラが、心配して夫のスタンリーと一緒に彼を呼び続けている。しかしその直後ビリーはベルギー戦線に戻っていた。二人のGI、ラザロ(ロン・リーブマン)とウォーリーに、ドイツ兵と間違えられて捕まってしまったのだ。しかしそのあとで3人ともドイツ軍の捕虜になってしまう。捕まってしまったことからの連想なのだろうか。ビリーは家のベッドでバレンシアに抱きついていた。二人のハネムーンなのだ。再び戦場、ビリーは捕虜たちと歩いていた。ウォーリーの足をふみつけラザロに殴られた彼はドイツ人カメラマンに写真を撮られた。しかしビリーはすぐピルグリム・ビルの開場式という晴れの舞台にいた。混む合う式場が混み合う列車の中に変った。捕虜たちが輸送されているのだ。ビリーはそこでワイルド大佐や老捕虜と知り合った。その列車のなかではウォーリーの足が腐り死にかけていた。ビリーが足をふんだためだという。彼が死ぬと、ラザロは親友のために復讐を誓った。捕虜収容所につくと、ワイルドも老捕虜も死んだ。ラザロに殴られそうになったビリーを中年兵のダービー(ユージン・ロッシェ)が助け、二人は仲良くなった。収容所でビリーは突然気を失い、場面は結婚1年後のビリー夫婦の家に移る。妻は身ごもり、幸福な生活だった。愛犬を連れて湖畔に座っていた彼は空を飛ぶ不思議な物体を見た。トラルファマドア星に行くのはまだ先のことらしい。収容所のアメリカ兵はドレスデンへ移送されることになり、捕虜代表にダービーが選ばれた。ドレスデンでは、彼らはドイツの老将校や若い衛兵たちの指揮下におかれたが、ビリーの意識はイリアム飛行場にとんでいた。義父のマーブル(ソーレル・ブーケ)とモントリオールの会議場へ行くところなのだ。離陸直後にビリーはスキー・マスクをかぶった男たちの幻を見た。それは飛行機の墜落を意味していた。二人の乗った飛行機は離陸直後に墜落した。スキー・マスクの男たちに助けられたのはビリー一人だった。手術のために頭に穴をあけられたビリーが、広島以上の死者を出したといわれるドレスデンの空襲現場に戻る。彼らが地下壕から出るとあたりは一面の廃墟だった。小さな人形を見つけたダービーがポケットに入れたところをドイツ兵に見つかり、その場で射殺された。再び病院。ビリーは助かったものの、バレンシアは半狂乱になって病院にかけつける途中自動車事故で死んだ。家に帰ってみると、グレていた息子(ペリー・キング)が頼もしく成長してベトナムから帰って来ていたが、ビリーの心はもう一つ晴れない。その彼にトラルファマドアから来た不思議な物体が近づき、あっという間に連れて行かれてしまう。その星の家の住居はまるでドームのようだ。そこへあとからモンタナも連れてこられた。トラルファマドアの物体は二人の頼みを何でも聞いてくれるドームで暮しながら二人は次第に愛し合うようになった。ドレスデンでも、飛行機の墜落でも不死身だったビリーに、ついに死が訪れた。フィラデルフィアで演説中に撃たれたのである。犯人はラザロだった。彼は再びトラルファマドアに引き戻される。そこには妊娠した美しいモンタナとの楽しい生活が待っていた。

「スローターハウス5」の解説

時間から切り離された主人公ビリー・ピルグリム(巡礼者の意)の過去・現在・未来を彷徨する姿を描いたカート・ボネガットの小説の映画化。製作はポール・モナシュ、監督は「スティング」のジョージ・ロイ・ヒル、脚本はスティーブン・ゲラー、撮影はミロスラフ・オンドリチェク、音楽はバッハの「ブランデンブルグ協奏曲」他6曲を使用。編集はデデ・アレンが各々担当。出演はマイケル・サックス、ロン・リーブマン、ユージン・ロッシェ、ヴァレリー・ペリン、ソーレル・ブーケ、ペリー・キングなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。テクニカラー、ビスタサイズ。1972年作品。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1975年4月12日
配給 ユニヴァーサル映画=CIC
制作国 アメリカ(1972)
上映時間 104分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-06

この映画「スローターハウス5」は、現代アメリカ文学を代表するカート・ヴォネガット・ジュニアが、1969年に発表した彼の戦争中の体験に基づく、半自伝的なSF小説の映画化作品だ。

そして、この作品は、人生の不条理、戦争の残酷さが、時にはアイロニーを込めて、ファンタスティックに描かれているのです。

このジグソー・パズルのような複雑な構成の原作を、「明日に向って撃て!」「スティング」の名匠ジョージ・ロイ・ヒル監督が、類まれなる卓抜した演出で映像化した傑作だと思う。

原作の小説は私の愛読書の1冊ですが、この原作小説は、複雑な構成をとっていますが、映画もまたその構成に沿い、過去、現在、未来や場所を超えて自在に飛び交っていると思う。

第二次世界大戦に出征し、戦後は実業家として成功、一見平凡な生活を送るビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)。
だが彼は、時空を超えて自由に過去・現在・未来を行き来できる超能力を持っていた。
しかも、彼が常に立ち戻るのは、第二次世界大戦中に、遭遇したドレスデンの無差別攻撃。
そこでの悲痛な体験が彼の人生を決定したのだ。

最終更新日:2024-06-16 16:00:02

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