P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-17
このハーバート・ロス監督の「グッバイガール」は、観終わった後、実に爽やかな気分にさせてくれる、”ニール・サイモン喜劇”の真骨頂を見せてくれる、そんな素敵な、素敵な映画なのです。
チョッピリ哀しくて、チョッピリ甘くて、チョッピリおかしい—-。そう、メチャクチャにおかしいのではなく、チョッピリおかしいところがいいんですねえ。
ドタバタではなく、人情の機微をついたおかしさだから、大笑いではなく、クスッとくるおかしさなのです。
だが、そのクスッは心の奥底に分け入ったものなので、”爽やかな余韻”といったものが残るのです。
“人生はお芝居だ”と、なぜか役者ばっかり愛してしまう女。そして男は役者として成功すると同時に出ていってしまう。愛する事と傷つく事がいつもワンセット—-。
そんな気は強いが愛らしい女性ポーラを、マーシャ・メイスンが素敵に好演。
それにリチャード・ドレイファスが演じるおかしな男を通して、時代の空気を生き生きと再現していて、実に見応えのあるウェルメイドな素晴らしいドラマになっていると思います。
いつも男にグッバイされてばかりいる子連れの女性が、遂に逃げない恋人を獲得するまでのハッピーエンド・コメディ—-。 脚本のニール・サイモンは、気のいい女性の悲哀と売れない役者の軽妙なやりとりを、マーシャ・メイスンとリチャード・ドレイファスの出演を念頭に置いて書いたと言われるだけあって、彼らの名演を引き出す事に成功した、よく練り込まれた素晴らしい脚本だと唸らされます。 そして、リチャード・ドレイファスが主演するシェークスピア劇の「リチャード三世」がゲイであったという新解釈や、演出家が極度のマザコンであったというような描写がありますが、それはニール・サイモンの当時流行っていた、”アングラ文化”への嫌味なのかも知れません。