風とライオン 感想・レビュー 6件
かぜとらいおん
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P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
誘拐を企んだ野蛮さを許せず、盗人を斬首する残酷さに吐き気をもよおすのですが、しかし、自分たち母子三人には紳士の礼をつくし、部下を叱咤する威風は辺りを払い、敬虔な祈りの姿を厳しさが包み、優しい微笑にぬくもりが広がるのです。
この砂漠に生きる男、そうしたライズリとは、なんであろうか? -------。
父を持たぬ子供たちは、いつか彼に、父親への畏敬にも似た憧れを抱き、未亡人もまた心を開いていくのです。
ロマンの英雄ライズリが、その雄々しさで観ている私の魂を奪うのは、脱走した未亡人と子供たちが、手引きした男の手で不気味な山賊たちに引き渡され、あわや危難が迫る時、轟く銃声とともに馬上疾駆のライズリが、長剣を振るって敵をなぎ倒す場面だ。
ジョン・ミリアス監督は、心酔する黒澤明監督の「七人の侍」に魅入られて、このような戦闘シーンを撮りたかったのだと言う。
そして、ラストの30分にもわたる、今度は独仏の軍隊に捕らわれたライズリを、アメリカ海兵隊とリフ族が救出する一大戦闘シーンもまた見ものだ。
大砲とライフルと剣が入り乱れる。馬蹄の高鳴り。 ジェリー・ゴールドスミスの音楽が、ドラマティックな陶酔を呼ぶのです。 そして、その最後の一瞬に、私がこの映画の中で最も感動した、素晴らしい場面がきらめくのです。 未亡人の息子の少年と、馬上のライズリとのすれ違いざまの別れのシーンです。 少年は、リフ族のターバンを被り、ライズリ愛用の銃を捧げ持ち、再び、黒装束のヒーローとの瞬間の接触に、哀切の余韻が私の心の琴線を震わします。 この映画の題名の"風"とは、ルーズヴェルトを讃え、"ライオン"とは、自らをなぞらえた、ライズリの大統領宛ての書簡から取っているのです。 この映画は、現代人の心を少年の素直さに引き戻す、郷愁とロマンティシズムにあふれた見事な男のドラマだと思います。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
誘拐という行為は野蛮だけれども、それは列国の圧力からモロッコを救う、民族の栄光を賭けた狼煙だったのです。
この狼煙に乗じてアメリカ側は、一気に国力の拡大を図ろうとするのです。
第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズヴェルト(ブライアン・キース)は、次期大統領選への思惑も絡んで、大西洋艦隊をモロッコへ派遣し、人質を生きたまま返すか、ライズリの首を渡すかと、派手なパフォーマンス的な宣言で、合衆国民の喝采を浴びるのです。
こうして、ライズリ対ルーズヴェルトの虚々実々の戦いが繰り広げられていくことになるのです。
囚われの身となった未亡人のペデカリスは、息子と娘をしっかり両脇に"蛮族"どもと砂漠の旅を続けるのですが、気丈にたじろがぬ彼女の威厳と激しさに、キャンディス・バーゲンの魅惑が輝いて、実に素晴らしい。
その彼女にとって、異教の徒のライズリは、その全てが謎だったのです。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
この映画は、1904年のモロッコが舞台。
その資源と利権を狙って、世界の列強が介入してきて、しのぎを削る中、一つの誘拐事件が起きます。
タンジールに住むアメリカ人一家の邸宅を、騎馬の一隊が襲ってきて、未亡人のペデカリス(キャンディス・バーゲン)と、幼い息子と娘を誘拐していくのです。
この騎馬の一隊を率いるのは、黒装束に身をまとったリフ族の首長ライズリ(ショーン・コネリー)だ。
半白のヒゲとシワと、黒々と射る瞳の鋭さ。
初老の精悍さに、王者の風格と威厳が漂っているようだ。
そう、彼こそが、この映画の主人公であり、ヒーローなのです。
演じるショーン・コネリーが、かつての007シリーズでのジェームズ・ボンドのイメージを完全に払拭し、"見直す"というくらいじゃ追いつかないほど、男の私から見ても、本当に震えがくるほどに惚れ惚れしてしまうのです。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
この映画「風とライオン」は、現代人の心を少年の素直さに引き戻す、郷愁とロマンティシズムにあふれた見事な男のドラマだ。
映画という虚構の中で描かれる男については、人間的な弱さや脆さを持ったダメ男が好きだ。
この現代において、ダメでない男のどこに魅力があるだろう。
だから、私は、そういうダメ男を主人公にした映画に魅かれてしまう。
だが、このジョン・ミリアス監督、ショーン・コネリー主演の「風とライオン」は違う。
この映画に登場するのは、ダメさのかけらもない、まぎれもなきヒーローなのです。
男の強さと、男の美しさと、男の優しさと、その全てを併せ持った"立派な男"の、なんと惚れ惚れする魅力なのだろう。
忘れていた"真の男"への夢が、いま鮮やかによみがえるのです。
限りない憧れをかきたてられ、慕情をうずかせて、この大スケールの映画のダイナミックな迫力に匂い立つ、途方もないロマンティシズムに、私はのめりこんでしまうのです。