風とライオン 作品情報
かぜとらいおん
1904年10月15日、モロッコのタンジール。その日イーデン・ペデカリス夫人(キャンディス・バーゲン)は、新任の副領事と昼食をとっていたところを、一団の馬賊に襲われ、12歳の長男ウィリアムと9歳の娘ジェニファーと共に誘拐された。一味の首領はライズリ(ショーン・コネリー)といい、王者の風格が感じられる男だった。ライズリの一団は、イーデンと2人の子供たちをリフ山脈のふもとに続く丘陵地帯に連れていった。一方、ここはアメリカ合衆国の首都ワシントン。「アメリカ婦人、リフ族の首長ライズリに誘拐さる」のニュースは、国防長官ジョン・ヘイ(ジョン・ヒューストン)を通じ、第26代大統領シオドア・ルーズベルト(ブライアン・キース)に報告された。当時、モロッコには列強国が腰を据えていた。フランス、イギリス、オーストリア、ドイツ、そしてロシア。ルーズベルトはこの事件を次期選挙に利用しようとして、国威の昂揚をはかった。『人命とアメリカ人の財産を尊重してもらうため、大西洋艦隊をモロッコに派遣する。合衆国はペデカリス夫人を生きたまま返してもらうか、ライズリを殺すしかない』とルーズベルトは宣言した。その頃、イーデン・ペデカリス夫人と2人の子供たちはライズリの一行とともに、砂漠と海が見える台地を進んでいた。ライズリはペデカリスに、『わしはムレー・アーメッド・エル・ライズリ。リフ族バーバリー人の統治者だ。わしこそ、回教徒の擁護者。予言者モハメッドの血はわしの体に流れている』と語った。一方合衆国のタンジールの領事ガマーリ(ジョフリー・ルイス)は副領事ドライトンを伴なって太守を訪れた。太守はモロッコで最も権力のある男で、甥にあたるサルタンの背後の実力者だ。だがその会談は不成功に終わり、領事はサルタンに会うことにした。ランズリがイーデンとその子供たちを誘拐したのは、そのサルタンを窮地に陥れることだった。サルタンはヨーロッパ諸国のいいなりになりモロッコの民衆を苦しめているために、西欧とライズリの板挟みにし国土と名誉を取り返そうというのがライズリの狙いで、そのためのイーデン母子誘拐だった。ライズリの思惑どおり、サルタンの説得に失敗したアメリカは、海軍の艦隊をモロッコに出動させた。ジェローム大尉(スティーヴ・カナリー)の指揮下、海兵隊のライフル2個中隊が上陸、タンジールの町を行進し、サルタンの宮殿に向かった。海兵隊と宮殿の間ですさまじい銃撃戦が始まり、そしてサルタンは捕えられた。その報せはウェザーヌの首長によってライズリにもたらされた。『太守はアメリカに提案した。スペイン銀貨で7万ペソを提供し、リフ族の領分から外国の兵隊をすべて撤退させ、ライズリとその部下たちが町へ自由に出入りすることを許す。この提案はアメリカ女と子供たちが交換条件で、アメリカのサルタン、ルーズベルトが約束した』。罠だというウェザーヌの首長と、イーデンの警告にもかかわらず、ライズリは取引きに応ずることにし、部下を従えてイーデン母子を送り届けるために出発した。エル・サラフの村で、イーデン母子はジェローム大尉にひき渡され、ライズリはドイツとフランスの軍隊に捕えられた。翌朝、イーデン母子は海兵隊の援護をうけてライズリを救出した。と同時に、村の外に待機していたライズリの部下たちがウェザーヌの首長の指揮の下、攻め込んできた。村ではアメリカ海兵隊が、ドイツとフランスを相手に壮烈な戦いを展開しており、そこにリフ族が加わり、四つどもえとなった。ライズリ救出は成功し、彼は部下と共に去った。後日、ホワイトハウスのルーズベルトのもとに、ライズリから手紙が届いた。「あなたは風のごとく、私はライオンのごとし。あなたは嵐をまきおこし、砂塵は私の眼を刺し、大地はかわききっている。私はライオンのごとくおのれの場所にとどまるしかないが、あなたは風のごとくおのれの場所にとどまることを知らない」。
「風とライオン」の解説
1904年のモロッコを舞台に、原住民族リフ族とアメリカの国際紛争を描く。製作はハーブ・ジャッフェ、脚本・監督は「デリンジャー」のジョン・ミリアス、撮影はビリー・ウィリアムズ、音楽はジェリー・ゴールドスミス、編集はボブ・ウォルフ、衣裳デザインはディック・ラモットが各々担当。出演はショーン・コネリー、キャンディス・バーゲン、ブライアン・キース、ジョン・ヒューストン、ジョフリー・ルイス、スティーヴ・カナリー、ロイ・ジェンソンなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1976年4月24日 |
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配給 | コロムビア映画 |
制作国 | アメリカ(1975) |
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、6件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
誘拐を企んだ野蛮さを許せず、盗人を斬首する残酷さに吐き気をもよおすのですが、しかし、自分たち母子三人には紳士の礼をつくし、部下を叱咤する威風は辺りを払い、敬虔な祈りの姿を厳しさが包み、優しい微笑にぬくもりが広がるのです。
この砂漠に生きる男、そうしたライズリとは、なんであろうか? -------。
父を持たぬ子供たちは、いつか彼に、父親への畏敬にも似た憧れを抱き、未亡人もまた心を開いていくのです。
ロマンの英雄ライズリが、その雄々しさで観ている私の魂を奪うのは、脱走した未亡人と子供たちが、手引きした男の手で不気味な山賊たちに引き渡され、あわや危難が迫る時、轟く銃声とともに馬上疾駆のライズリが、長剣を振るって敵をなぎ倒す場面だ。
ジョン・ミリアス監督は、心酔する黒澤明監督の「七人の侍」に魅入られて、このような戦闘シーンを撮りたかったのだと言う。
そして、ラストの30分にもわたる、今度は独仏の軍隊に捕らわれたライズリを、アメリカ海兵隊とリフ族が救出する一大戦闘シーンもまた見ものだ。
大砲とライフルと剣が入り乱れる。馬蹄の高鳴り。 ジェリー・ゴールドスミスの音楽が、ドラマティックな陶酔を呼ぶのです。 そして、その最後の一瞬に、私がこの映画の中で最も感動した、素晴らしい場面がきらめくのです。 未亡人の息子の少年と、馬上のライズリとのすれ違いざまの別れのシーンです。 少年は、リフ族のターバンを被り、ライズリ愛用の銃を捧げ持ち、再び、黒装束のヒーローとの瞬間の接触に、哀切の余韻が私の心の琴線を震わします。 この映画の題名の"風"とは、ルーズヴェルトを讃え、"ライオン"とは、自らをなぞらえた、ライズリの大統領宛ての書簡から取っているのです。 この映画は、現代人の心を少年の素直さに引き戻す、郷愁とロマンティシズムにあふれた見事な男のドラマだと思います。