P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-12
このスパイ小説の第一人者ジョン・ル・カレの原作「鏡の国の戦争」は、ル・カレの小説でお馴染みのメイン・キャラクターのジョージ・スマイリーのライバルである陸軍内の謀略機関による謀略と失敗を描いた小説で、スマイリー・シリーズの一編とも言えます。
しかし、この映画版では、そうした対立の図式は描かずに、東側の新型ミサイルの写真を手に入れるために、英国の諜報部が一般人をにわかスパイに仕立て上げ、彼に東ドイツに潜入させるというシンプルな潜入物語になっています。
だから、スマイリーも最後まで登場せず、ラストシーンの直前にそれらしき諜報部員が出てくるのだが(原作ではこの人物がスマイリーで、陸軍の失敗を収拾するために乗り出してきたのだ)、直後に映画は終わりを告げます。
諜報組織の競い合いやスマイリーをねぐった構成は、ジョン・ル・カレのスパイ小説を愛する者としては、やや物足りない。
クリストファー・ジョーンズが演じていたり、若き日のアンソニー・ホプキンスの熱演が観られたり、名優ラルフ・リチャードソンの風格漂う演技にも接することができる。