鏡の国の戦争 作品情報

かがみのくにのせんそう

フィンランドで、英国の諜報部員が殺された。彼は、東ドイツで、新型ミサイルを撮影したフィルムをもっていた。この事態に対処するため、英国の諜報本部では、妊娠した愛人(スーザン・ジョージ)に会うため密入国したポーランド人レイザー(クリストファー・ジョーンズ)を、市民権をえさにスパイに仕立て上げた。彼の任務は新型ミサイルの所在を確認することだった。警備隊員を刺し殺し、国境を突破したレイザーは、国境際の小屋に待機している諜報部長ルクレック(ラルフ・リチャードソン)、部員のエイブリー(アンソニー・ホプキンス)、ホールデン(ポール・ロジャース)の3人に情報を送りつづけた。やがて、目的地カルクシュタットに向かい始めた彼は、途中トラックの運転手(マイケル・ロビンス)に正体を見抜かれ、刺殺してしまった。いまや、各所に非常線が張られていた。うばったトラックで道をいそいでいたレイザーは、1人の娘(ピア・デゲルマルク)と知り合ったが、2人は警戒網にひっかかってしまった。しかし、レイザーを故意に泳がせて、目的を知ろうと計る警備隊はすぐに2人を釈放した。その後、とある湖のほとりで娘と別れた彼は、カルクシュタットで、例のフィルムの撮影者に会った。そこで、例のフィルムが、この男の金かせぎのための合成写真であることを知った。いまや不用になった無線機を処分しようとしたレイザーは、秘密警察に見つかりホテルまで送られた。彼はようやく、自分が敵の罠の中にいたことを知った。軟禁状態のホテルで、レイザーは例の娘と出会った。自分たちを待ちうける運命の苛酷さに思いをはせる2人。その時、レイザーはホテルの前の道路を地響きを立てて運ばれるミサイルを見た。時をうつさず、ミサイル確認の発信をするレイザー。だがその時、機関銃の無数の銃弾が、2人の肉体を蜂の巣のようにつら抜いていった。今、平和共存の世界の暗部で2つの青春が意味もなく散った。

「鏡の国の戦争」の解説

“権力”によりスパイに仕立て上げられ殺された1人の青年の姿から、表面的な共存の裏でくり展げられている冷戦の不気味さを浮かび上がらせた作品。製作総指揮はM・J・フランコヴィッチ、製作は「オリバー!」の製作デザインを担当したジョン・ボックス。監督・脚色は「キャット・バルー」の脚本でアカデミー賞にノミネートされたことのあるフランク・R・ピアソン、原作は「寒い国から帰ったスパイ」のジョン・ル・カレ、撮影はオースティン・デンプスター、音楽はウォリー・ストット、美術はテレンス・マーシュ、編集はウィリー・ケンプレンがそれぞれ担当。出演は「熱い肌」のクリストファー・ジョーンズ、「みじかくも美しく燃え」のピア・デゲルマルク、「素晴らしき戦争」のラルフ・リチャードソン、「冬のライオン」のアンソニー・ホプキンス。他に、ポール・ロジャース、スーザン・ジョージ、シリル・シャップス、マイケル・ロビンスなど。イーストマンカラー、パナビジョン。1968年作品。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1970年5月16日
配給 コロムビア
制作国 アメリカ(1968)

ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-12

このスパイ小説の第一人者ジョン・ル・カレの原作「鏡の国の戦争」は、ル・カレの小説でお馴染みのメイン・キャラクターのジョージ・スマイリーのライバルである陸軍内の謀略機関による謀略と失敗を描いた小説で、スマイリー・シリーズの一編とも言えます。

しかし、この映画版では、そうした対立の図式は描かずに、東側の新型ミサイルの写真を手に入れるために、英国の諜報部が一般人をにわかスパイに仕立て上げ、彼に東ドイツに潜入させるというシンプルな潜入物語になっています。

だから、スマイリーも最後まで登場せず、ラストシーンの直前にそれらしき諜報部員が出てくるのだが(原作ではこの人物がスマイリーで、陸軍の失敗を収拾するために乗り出してきたのだ)、直後に映画は終わりを告げます。

諜報組織の競い合いやスマイリーをねぐった構成は、ジョン・ル・カレのスパイ小説を愛する者としては、やや物足りない。
クリストファー・ジョーンズが演じていたり、若き日のアンソニー・ホプキンスの熱演が観られたり、名優ラルフ・リチャードソンの風格漂う演技にも接することができる。

最終更新日:2024-05-22 16:00:02

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