喝采(1954) 作品情報

かっさい

ブロードウェイの若い演出家バーニー・ドッド(ウィリアム・ホールデン)は、今度上演する新作の主演者にフランク・エンジン(ビング・クロスビー)というミュージカル・スターを使いたいと思っていたが、プロデューサーのフィル・クックは不賛成だった。フランクは酒浸りで演技にも唄にも昔の面影がないというのである。しかしバーニーはクックを説き伏せてフランクのテストをした。結果はよかったが、自信のないフランクはバーニーの返事も聞かずに去った。バーニーは彼の行方を求めて家を探し当てた。フランクは契約に不満のようだったが、妻ジョージー(グレイス・ケリー)にすすめられて一応承諾した。稽古にかかってもフランクの態度は落ち着かず、自分がこうなったのはジョージーの責任だとバーニーに語った。1人息子ジミーが自動車にひかれてからジョージーは酒を飲みはじめ、何度も自殺を試みてフランクを困らせるというのだ。この話を聞いてバーニーはジョージーを憎むようになったが、何も知らぬジョージーにはこのバーニーの態度が理解出来なかった。ある朝フランクがヒゲをそっているとき、自分の古いレコードがかけられているのを聞いた。このレコードがヒットしたころ、フランクは当時5才のジミーを連れてレコード会社へ行き、ふとしたことからジミーは自動車にひかれたのだった。フランクは当時を思い出して憂欝になり芝居に出るのがいやになった。ジョージーにはげまされて行ったが、ボストンの初演は失敗だった。ジョージーは誤解するバーニーに責められ、ニューヨークへ帰れと言われた。堪忍袋の緒が切れたジョージーはニューヨークへ帰ることにしたが、フランクは男に会うために帰るのだろうと彼女を責め、町に出て泥酔し、留置場に入れられた。身柄引き取りに行ったバーニーは先に来ていたジョージーと話すうち、ジミーが死んで酒を飲みはじめ自殺しかけたのはフランクであることを知り、献身的なジョージーの態度に愛情さえおぼえるようになった。やっと目ざめたフランクはニューヨークの初日に素晴らしい演技を見せた。ジョージーは喜んだが、彼女に更生を誓うフランクを眺めるバーニーの心は何とはなく淋しかった。

「喝采(1954)」の解説

「失われた少年」と同じくウィリアム・パールバーグが製作し、ジョージ・シートンが監督した1954年作品。ブロードウェイで上演されたクリフォード・オデッツ『ユーモレスク』の戯曲から監督者シートン自身が脚色した。撮影はジョン・F・ウォレン、音楽は「愛の泉」のヴィクター・ヤング。主演は「ブルー・スカイ(1946)」のビング・クロスビー。この作品でアカデミー主演女優賞を得た「トコリの橋」のグレイス・ケリー、「トコリの橋」のウィリアム・ホールデン、「拳銃無情」のアンソニー・ロス、ジャクリン・フォンテイン、エディ・ライダーらが助演する。

公開日・キャスト、その他基本情報

配給 パラマウント映画会社
制作国 アメリカ(1954)
上映時間 104分

ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2025-04-17

グレース・ケリーの短いハリウッドでのスター人生において、アルフレッド・ヒッチコック監督の手による「裏窓」と「泥棒成金」の2作品の間に位置し、そしてアカデミー主演女優賞を彼女にもたらしたのが、この映画「喝采」だ。

ブロードウェイのヒット戯曲の映画化であるこの作品は、モノクロフィルムによる作品ですが、それとは関係なしに、ヒッチコック作品の時のグレース・ケリーとは、まるで違う彼女の一面を楽しめる作品だと思う。

物語は、かつては人気エンターテイナーであったが、今はアル中となってしまった夫(ビング・クロスビー)とその妻(グレース・ケリー)。

ある日、夫に舞台の主役の話が転がり込む。
なんとか立ち直ってもらおうと献身的に尽くす妻だったが、夫は舞台の悪評に落ち込むばかり。
そんな時、若き演出家(ウィリアム・ホールデン)は彼女に抱いていた熱い想いを告白するのだった------。

簡単に言ってしまえば、バックステージものの三角関係のドラマ。
とはいえ、グレース・ケリーをはじめ、ビング・クロスビー、ウィリアム・ホールデンというベストなキャストによる名演で、多くの映画ファンの心をつかんだ傑作だと思う。

この作品でのグレース・ケリーは、ヒッチコック作品の彼女とはまるで別人のような感さえしてきます。
ヒッチコックが愛したグレースは、ここにはいません。
ここにいるのは、決して本心を見せない”冷淡で暗い”人妻なのです。

彼女は、人生に疲れながらも恋に揺れ動く。
映画の中盤でその苦渋の思いを、ウィリアム・ホールデン扮する若き演出家にぶつけるシーンのグレースの演技は圧巻だ。

いくら女は強いといわれても、それは最終的に頼ることのできる男がいる上でのことだと思わずにはいられない。
今も昔も、女の本質は変わっていないのだと思う。

最終更新日:2025-04-27 16:00:01

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