P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-03
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
売人の追撃、情報屋の利用、囮捜査----、現代アメリカにおいて悪を制するためのテクニックの全てが、フリードキン監督お得意のスピーディーな演出タッチでぐいぐいと、矢継ぎ早やに押しまくり、その展開をロサンゼルスの風俗のど真ん中をつっ走りながら見せて行きます。
「フレンチ・コネクション」のニューヨークの街が、生きて鼓動を続けていた以上に、ロサンゼルスの街のギラギラする生命感が伝わって来るだけに、捜査官の熱い生きざまが、生の緊張感を伴って見えて来るのです。
偽札造りを逮捕する見せ金を作るために、ダイヤモンドのバイヤーから強盗まがいに金を奪おうとしたり、主人公が死んだ後に、相棒が女の情報屋のヒモにおさまるあたりの描写が、フリードキン監督らしく、ひねりが効いていて、とても面白いと感じました。
そして、フリードキン監督は、"悪を制する絶対的な正義”を描こうとしているのではなく、この映画の原題にもなっている「To Live and Die in L.A.」、つまり、「ロスで生き、ロスで死ぬ」ためには、対する"悪への相対的な正義"しかないという論理で押して来ます。
このロスの街で生き生きと、走る男たちが熱く熱くとらえられているからこそ、フリードキン監督の論理には、有無をも言わせぬ説得力があるのです。 この映画は、鬼才ウィリアム・フリードキン監督による、我々、フリードキン・ファンの魂を熱くし、血沸き肉躍る、映画的興奮と映画の醍醐味を味合わせてくれる、貴重な愛すべき作品なのです。