南部の人 作品情報

なんぶのひと

サム・タッカーはアメリカ南部の移動農業労働者だった。彼の土への愛情は、叔父の死を契機に独立農たらんと決心させた。彼は親方から3年間耕作されなかった河岸の土地を借り受け、祖母と妻と子供2人を連れて見る影もないろう屋に移って来る。妻のノーナはまずストーブに火を入れて我家の楽しさをつくり出そうとするのだった。祖母は年寄りの気難しさから何かにつけて愚痴をこぼすがノーナやサムの取りなしで段々にその生活になじんでいった。サムはまた事毎に隣人のヘンリー・デイヴァーズの反発を受けなければならなかった。デイヴァーズは凶作、洪水、妻の死等打ち続く不幸に性質が気難しくなってしまっていた。だが彼にも楽しみはある。それは近くを流れる河に住む鉛筆と呼ばれる一匹の大鯰を捕らえる事だった。彼は毎日その釣鉤を作るのに多忙だった。サムはノーマと共に終日荒地で働いた。そして春の訪れと共に種まきもすっかり済ますことが出来た。だが秋から春にかけて狩猟と漁獲のみによる偏った食生活から、男の子のジェットが恐れていた春熱病に冒される。『新鮮な野菜、果物、牛乳等を充分とらなければいけない』と医師は言った。両親の心痛、わけてもノーナの悲嘆は絶望的だった。だがサムの母親が手伝いに来てくれた事やその母親を愛する乾物商のハーミーが1頭の乳牛を贈ってくれた事が、サムやノーナに再び土に生きる気力を蘇らせた。ある日、サムはデイヴァーズの家畜が自分の野菜畑を荒らしているのを見てデイヴァースをとがめた事から、日頃の反感が爆発し二人は激しく闘う。闘い勝ったサムが河で傷口を洗っていると、彼の仕掛けた釣糸がぐんぐん引かれるのに気がついた。まさしく「鉛筆」だ。サムの背後に忍び寄り猟銃の狙いをつけていたデイヴァーズも、銃を捨ててサムに協力し遂に大鯰をしとめることが出来た。デイヴァーズはこの獲物を貰い受け、その代り自分の野菜畑の野菜を全部サムに提供した。秋が廻ってきた。サムの農園も棉が見事に実っていた。彼と妻の努力がいよいよ報いられようとしているのだった。ある日、サムの母とハーミーとの結婚宴が人々の心からの喜びの中に弾んでいた。その最中大雷雨が来襲して、サムの農園は見る影もなく洗い流されてしまう。サムは落胆のあまり彼の親友テイムから話があった工場の働き口の事を真剣に考えてみた。だが妻ノーナは祖母を励まして吹き荒らされた家を整理しストーブの火を赤々と焚きつける。それを見たサムの心にも農園再建の勇気と確信が再び燃え上がってきた。

「南部の人」の解説

デイヴィッド・L・ロウ、ロバート・ハキム共同製作でジョージ・セッション・ペリーの原作「秋を手のうちに」より監督のジャン・ルノワールが脚色監督した1945年度作品。ルノワールは「どん底」その他で知られたフランス映画の巨匠。主演は新人ザカリー・スコットと「肉体と幻想」のベティ・フィールド。撮影は「歌へ陽気に」のルシエン・アンドリオが担当。音楽はウェルナー・ジャンセン。

公開日・キャスト、その他基本情報

制作国 アメリカ(1945)

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2018-03-13

サリー・フィールド主演、ロバート・ベントン監督作品〈プレイス・イン・ザ・ハート〉を観てレビューを読んでいたらジャン・ルノアール監督の本編との同時代性が在った…。其れにしても綿花の摘み取り労働、刺で指が何度も怪我する農作業シーンの辛苦さが痛々しかった!サリーは映画〈ノーマ・レイ〉での室内労働者に続いて農場の厳しく逞しい役処を演じていたー。

最終更新日:2024-03-12 15:48:57

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