自転車泥棒 作品情報

じてんしゃどろぼう

アントニオ(ランベルト・マッジォラーニ)は長い失業のすえ、ようやく映画のポスター貼りの仕事を得た。仕事に必要な自転車を質屋から請け出すために彼はシーツを質に入れた。六歳の息子ブルーノ(エンツォ・スタヨーラ)を自転車に乗せ、彼はポスターを貼ってまわった。ところがちょっとしたすきに自転車が盗まれてしまった。自転車がなければまた失業だ。アントニオは無駄とはわかっていても警察に行った。毎日何千台も盗まれている時だ、警察は相手にしてくれない。こうしてアントニオ親子の自転車探しがはじまった。ローマの朝早く、2人は古自転車の市場に行った。ここで泥棒らしき男に会うが、証拠がない。その男と話していた乞食の跡をつけるが、乞食も逃げ出す。途方にくれて女占い師を訪ねるが、もちろんなんの答えもでない。いらいらしてついブルーノにあたってしまう。偶然泥棒を発見したが、かえって仲間にやられそうになる。ブルーノの機転で警官が来るが、肝心の自転車はない。やけになったアントニオはとうとう競技場の外にあった自転車を盗んでしまうが、たちまち捕ってしまった。子供の涙の嘆願に許されるが、アントニオは恥かしさに泣き、そんな父の手をブルーノは黙ってとって、タ暮のローマの道に姿を消すのだった。

「自転車泥棒」の解説

「靴みがき」に続いて監督のヴィットリオ・デ・シーカと脚本家のチェザーレ・ザヴァッティーニのコンビが発表したネオレアリズムの代表的傑作である。「靴みがき」同様素人俳優を起用したもので、この二作によりデ・シーカとザヴァッティーニコンビの映画づくりは完成の域に達した。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督ヴィットリオ・デ・シーカ
出演ランベルト・マッジォラーニ エンツォ・スタヨーラ リアネーラ・カレル ジーノ・サルタマレンダ ビットリオ・アントノーチ
配給 イタリフィルム=松竹
制作国 イタリア(1948)
上映時間 84分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、2件の投稿があります。

P.N.「グスタフ」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2019-10-14

ネオレアリズモを代表するイタリア映画の歴史的名画。戦後の荒廃した庶民の生活を写実した、ありのままの記録。ベッドシーツを質草にして自転車を質請けする場面の天井まで積み上げられたシーツの山、自転車や部品が並ぶ市場、サッカー場の周りに置かれた夥しい数の自転車、占い師に縋るエピソード等々。戻った自転車を手入れする幼い長男が傷を見つけて憤慨する細微な描写もいい。喧嘩別れした後の息子の安否に狼狽する父の心情と、レストランで食事する金持ちと比べて味わう親子の惨めさが、切実極まりない。そして、追い詰められた父が取った有り得ない行為を凝視する瞬間の長男の眼が、全てを物語る残酷な結末。子供の記憶に刻まれた親の姿が、その時代と社会を写し一生の心の傷になる。泣きながら寄り添う長男の手を握り絞めてから、恥辱に耐え切れず涙する父。ラストシーンに、これほど言葉を失うものは無い。

最終更新日:2024-01-13 02:00:05

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