雪国(1957) 作品情報

ゆきぐに

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった--その雪に深く埋れた名もなき温泉場に日本画家の島村は、昨年知り合った駒子が忘れられずに訪れた。駒子は養母とその息子行男の治療費を稼ぐため芸者になっていた。彼女の義妹葉子は島村と駒子の仲を憎しみの眼で瞶めた。だが、二人の胸には激しい愛の炎が燃え立っていた。二人とも、とうてい結ばれぬ恋だとは覚っていたが、年に一度の逢う瀬が、いつしか二人にこの上ない生きがいとなってしまった。島村には東京に妻子がいた。駒子には養うべき人々と、そのための旦那をもっていた。駒子は島村と一緒に浮き浮きして楽しそうだった。しかし、夜、島村と二人きりになると、駒子はままならぬ二人の運命の切なさに身もだえするのであった。その冬島村が帰京する日駒子は駅に見送りに来ていると、葉子が行男の急変を知らせに来たが、人の死ぬのを見るのはいやと、家とは逆の方向に歩いていった。次の年、約束より遅く島村は来た。すでに養母も行男も死んでいなかった。駒子は旦那とも手を切っていた。そんな彼女に島村は、妻にも話したから一緒に東京へ行こうといった。駒子はその彼を呆然と見つめていたが、あんたは年に一度来る人……といって突伏した。翌晩、酔った駒子が島村の部屋に入って来た。抱き寄せる島村に駒子は悲しく無抵抗であった。翌朝、島村は駒子に、この雪国に来ないことがせめても君への謝罪だといった。愛の激しさ、厳しさ、哀しさを噛みしめながら二人は別れた。その夜、映画会をやっていた繭倉が火事になって、葉子は顔中大火傷を負った。--島村は次の年も、その次の年も姿を見せなかった。駒子は葉子を一生の荷物として、山袴にゴムの長靴をはいて雪の中を今日もお座敷へ急いでいた。

「雪国(1957)」の解説

川端康成の原作を「「廓」より 無法一代」の八住利雄が脚色、「猫と庄造と二人のをんな」の豊田四郎が監督した文芸篇。撮影は「殉愛」の安本淳。主な出演者は「あなた買います」の岸恵子、「忘却の花びら」の池部良、「世にも面白い男の一生 桂春団治」の八千草薫、「雨情」の久保明、森繁久彌。ほかに加東大介、東野英治郎、狼花千栄子、多々良純など。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督豊田四郎
原作川端康成
出演池部良 岸恵子 八千草薫 久保明 三好栄子 中村彰 浪花千栄子 春江ふかみ 水の也清美 加東大介 東郷晴子 森繁久彌 浦辺粂子 東野英治郎 多々良純 中田康子 万代峯子 市原悦子 若宮忠三郎 千石規子 加藤純子 桜井巨郎
配給 東宝
制作国 日本(1957)
上映時間 133分

ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、6件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2022-04-17

昨晩NHKBSドラマ版で川端康成原作の〈雪国〉を視聴。藤本有紀のシナリオに依る映像化作品。冒頭のトンネルのシーン,夜汽車の窓外に映し出された女の面影,雪のロケーション等ビデオ映像インスタレーション風な或いはラジオ朗読劇タッチで紡がれて行く。衣笠貞一郎監督の〈狂った一頁〉見たいな処も感じられて

最終更新日:2023-11-04 02:00:05

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