『リコリス・ピザ』デヴィッド・ボウイ楽曲が引っ張りだこの秘密とは?高橋芳朗×岡村詩野

『リコリス・ピザ』デヴィッド・ボウイ楽曲が引っ張りだこの秘密とは?高橋芳朗×岡村詩野
提供:シネマクエスト

ベルリン国際映画祭で金熊賞、世界三大映画祭であるカンヌ、ヴェネチア、ベルリンすべてで監督賞受賞と伝説を作り、常に世界中の映画ファンが新作を心待ちにしている天才監督ポール・トーマス・アンダーソン。その最新作『リコリス・ピザ』がついに7月1日(金)に公開となる。

オリジナル脚本の完成度の高さ、細かな脇役に至るまで行き届いた演出が高く評価され、アカデミー賞主要3部門にノミネートされた本作。主演は三姉妹バンド、ハイムの三女であるアラナ・ハイムとポール・トーマス・アンダーソン監督の盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマン。ともに本作で鮮烈な映画デビューを飾り、主演女優賞やブレイクスルー賞を総なめにし、全米の映画賞を席巻した。

共演にショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディとレジェンドが集結し、ふたりの感情に寄り添う音楽を手掛けたのはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド。ポール・トーマス・アンダーソン監督とは本作で5作品目のタッグとなる。脇を固めるレジェンドたち、散りばめられた当時の音楽やファッション、そして恋の痛みと嬉しさに溢れる主人公たちの姿に、誰もが“あの頃の気持ち”と映画の楽しさを思い出さずにいられない!

音楽ジャーナリスト 高橋芳朗x音楽評論家 岡村詩野
「ここ10年ぐらいずっとよく使われている印象」(高橋)
「どんな場面でもあらゆる作品でボウイの曲はフィットする」(岡野)
70年代のカルチャーがぎっしりと詰め込まれ、その再現度の高さと同時に誰もが懐かしく幸せな気持ちに浸れる雰囲気を持つ本作。予告編では、恋の痛みと嬉しさに溢れる主人公たちの姿と共にデヴィッド・ボウイの「火星の生活」が流れ、“あの頃の気持ち”と“映画の楽しさ”を思い出し、エモーショナルな映像を形作るきっかけとして大きな効果を生んでいるーー

音楽ジャーナリストの高橋芳朗と、音楽評論家の岡村詩野に、『リコリス・ピザ』で効果的な役割を果たしたデヴィッド・ボウイの楽曲が、どんな映画に使用されているのか、そして楽曲が持つ魅力について聞いた。

「2016年に亡くなったことをきっかけに、改めてボウイ作品をクローズアップしようという気運が高まっているのかもしれません」と高橋さん。「とはいえ、ボウイの楽曲はここ10年ぐらいずっと映画で使われ続けている印象があります。70年代初期の『ジギー・スターダスト』から後期のベルリン三部作、80年代の『レッツ・ダンス』まで、幅広い時代から選曲されているのが特徴ですね」と、近年だけではなく、デヴィッド・ボウイの楽曲が昔から多くの映画で使われていると指摘する。

楽曲が使用された映画について、「『バズ・ライトイヤー』や『オデッセイ』での「スターマン」、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』での「月世界の白昼夢」、『クロニクル』での「ジギー・スターダスト」など、SF映画で名盤『ジギー・スターダスト』の収録曲を使うケースが目立っていますが、『トップガン マーヴェリック』での「レッツ・ダンス」のように80年代のアイコンとして使われる機会も増えている印象です。ほかにも『ウォールフラワー』での「ヒーローズ」や『コーダ あいのうた』での「スターマン」、『ロングショット 僕と彼女のありえない恋』の予告での「モダン・ラブ」や『いつかはマイ・ベイビー』での「ヤング・アメリカンズ」など、青春映画からラブコメディまで本当に多岐にわたっています」と、次々とピックアップ!

音楽評論家の岡村さんはその魅力について「どんな作品でも、どんな場面でも、あらゆる作品でボウイの曲はフィットするということなのかもしれない」と語る。「ボウイの歌声ってどんな映画のどんなシーンでも決してセリフの邪魔にならない。ボウイ自身の作品ではもちろんあの色気ある声が圧倒的な魅力の一つになりますが、意外に背景に溶け込むこともできてしまう」と、映画との相性の良さが、多くの映画で使用される秘密だと分析。

「明確に関係あると言い切れませんが、ザ・ルーツ(アメリカのヒップホップグループ)のクエストラブが監督した『サマー・オブ・ソウル』が高く評価されたり、デヴィッド・バーン(元トーキング・ヘッズ)の『アメリカン・ユートピア』がロングラン上映しています。また、ボウイ自身のドキュメント映画『ムーンエイジ・ドリーム』はボウイの遺産管理団体の許可を初めて得た映画として話題になり、まもなく日本でも公開されます。近年、音楽ドキュメンタリーは急速に増えて、音楽の歴史が脚光を浴びている中で、デヴィッド・ボウイのドキュメンタリーが公開され、彼と言う人物と楽曲の多層性が見直されるきっかけなのかもしれません。その流れに映画内で彼の楽曲が多く使用される傾向が生まれているのかもしれませんね」と映画と音楽シーンの関連性を考察した。

恋の痛みと喜びを知るすべての人へ。デヴィッド・ボウイ初期代表曲の美しいバラード、「火星の生活」に乗せて、鮮やかに描きだされた予告編を改めてチェックして、 PTA最新作『リコリス・ピザ』7月1日の公開を待とう!

最終更新日
2022-06-29 12:00:08
提供
シネマクエスト(引用元

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