日程:6月19日(土)
場所:ユーロスペース
登壇者:サリー楓/スティーブン・ヘインズ/西原さつき/星賢人/星真梨子/杉岡太樹
ドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』が6月19日(土)に渋谷ユーロスペースにて公開初日を迎えた。初回上映のチケットは即完売! 映画上映後、出演者のサリー楓、「乙女塾」創立者の西原さつき、株式会社JobRainbow代表取締役の星賢人、同社取締役COOの星真梨子、本作のエグゼクティブプロデューサーを務めるスティーブン・ヘインズ、杉岡太樹監督による舞台挨拶が行われた。
サリー楓は、「こういった状況の中にもかかわらず、本日はお越しいただきありがとうございました。このような映画が日本で上映される歴史的瞬間に立ち会えたことに、勇気を感じます」と口火を切った。「最初に撮影を始めたきっかけは、ビューティーコンテストに出場する時にトレーナーを依頼したスティーブンから『撮らないか?』と言われたことでした。その日も今日のように雨が降る日で、今日家からここに来るまでに空を見ながら、当時のことや杉岡監督と撮影してきた数々の思い出が蘇りました」と振り返った。「映画をご覧になった皆さんがどういうふうに感じられたか、とても気になります。中には批判的なご意見もあるかもしれませんが、一緒に議論していきながら、よりよい未来を作っていくための一歩となることを願っています」と話した。
スティーブンは、「まず言いたいのは、ワオ!という気持ち」と大きなスマイルを浮かべ、「この映画は全ての人たちの映画。初めてレッスンの場で楓に出会い、ドキュメンタリーを撮りたいと伝えたらOKしてくれた。友人でもある素晴らしい監督のタイキが撮影を受けてくれ、この日を迎えられたことが夢のよう」と感激を表した。映画を通じて伝えたいことについて、「お互いが1人1人の違いを感じあって、話し合えることが最も重要だと思っている。この映画を観て何かを感じていただき、それを周りの方とシェアしていただけたら嬉しいです」と語りかけた。
女性らしくなりたい男性を応援する学びの場「乙女塾」を運営し、話題作となった「ミッドナイト・スワン」の脚本監修も務めた西原さつきは、「楓さんと初めて会ったのは『乙女塾』で、当時の楓さんはレディースの洋服もメイクも未経験でした。それから数年経って、こうして同じ舞台で挨拶できるのが嬉しい」と喜びを示し、「この映画は色々な解釈ができる作品。昨今のトランスジェンダーやLGBTの環境を踏まえると、非常に考える余地のたくさんある映画だと感じます。私がすごくいいなと思ったのは、きれいごとにせず、かといって不幸なところにフォーカスもせず、作り込むわけでもなく、事実を淡々とそのまま切り取って映していくドキュメンタリー映画であるところで、皆さんにもその気持ちが伝わるといいなと思います」と述べた。
LGBTの就職支援を行う株式会社JonRainbowの代表取締役で、劇中にも登場する星賢人は、「楓さんと最初に出会った時、すごい人がいるなあと思ってJonRainbowのプロジェクトを一緒に手伝ってほしいとお願いしました。私の中で楓さんの印象は麗しくて、強くもあり、賢くもある素敵な方。様々な経験をしている楓さんのあらゆる面がこの映画に詰まっていると思います。映画の冒頭で楓さんは綺麗で強い顔をしていますが、西原さつきさんやはるな愛さんなど様々な人との出会いを通じて、弱さや本音も見せるようになる。楓さんとは知り合って長いですが、作品を通じて改めて彼女について発見できて個人的に嬉しかったです。この映画を、私たちも含め皆さんで広げていくことが一つの使命だと思う」と語った。
弟である星賢人と共にJobRainbowを経営する星真梨子は、「本作を3回ほど観てから、英題の“You decide.”の“You”には色々な意味が込められていると感じました。“You”は楓さんのお父さんの目線、そしてきっと私たちのことも言われている。LGBTであっても、そうでない人も、です。映画を観ていくうちに、楓さんのような強く凛とした方であっても、自分らしくいられるかはご両親や周りの人の視線にもかかっている。私達は簡単に生きたいように生きようと言いますが、アイデンティティーってそういうものじゃない。親や先生や友人に認められて、自分はこう生きていけばいいと思えるのがアイデンティティーだと思います。そのはずなのにマイノリティーに対してだけ、それでいいじゃんと言ってしまうのは無責任。そういう無責任さと決別しなければいけないし、無視するのはやめようという強いメッセージを、楓さんと杉岡監督から“You decide.”というタイトルで突きつけられていると感じました。LGBT当事者ではない方がどう社会を変えていけるのかに、当事者の皆さんが自分らしく生きられるかどうかが、かかっている」と本作を通じて思ったという。
最後に杉岡監督が登壇者を代表して挨拶。「今回多くの方の協力をいただき、たくさんのインタビューが出ています。その中で、映画のご感想は皆さんにお任せして、どう受け取ってもらっても僕としては肯定したいとたびたび発信してきましたが、一つ言えていなかったことがある」と話した。「発信する時に差別を許すことはできないという自分自身のスタンスをはっきり表明しておきたいです。感じたことを発信して言葉にしていく時には、その先に受け取る人がいて、そこには楓さんや他の方々も含まれるかもしれません。ぜひ感じていただいたことを自由に発信してほしいのと同時に、発信方法によっては受け取る側にとっての差別が含まれる可能性もあります。皆さんのご友人や周りの方に映画をぜひお勧めいただきたいのですが、その時にそのことをお伝えいただけると嬉しいです。今日は本当にありがとうございました」と感謝を述べ、締めくくった。熱気に包まれた会場で登壇者達に大きな拍手が送られる中、舞台挨拶は幕を閉じた。