現在全国で公開中の、チームオクヤマ25周年映画『女たち』(内田伸輝監督)は、篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、そしてサヘル・ローズの様々な「女たち」が、コロナ禍の現在、それぞれ屈託を抱えながら過ごしてきた「日常」を描いた心揺さぶられる作品。「生きること」の映画である。
生きることの苦しさ、楽しさ、つらさ、そして喜びを「見つめる」映画体験のなかで、ひときわ心を動かされるのが、エンディングに流れる荒木一郎の歌声である。1966(昭和41)年、自ら作詞・作曲を手がけた「空に星があるように」でレコードデビュー。まだシンガーソングライターという言葉がなかった時代、「自作自演」と呼ばれた荒木一郎の優しい歌声は、センチメンタルなメロディー、美しい言葉で紡がれた歌詞で、1960年代という時代を創った。
それまでの歌謡曲とは一線を画した荒木一郎のサウンドは、昭和という時代の後半を美しく彩った。映画『女たち』の中で、倉科カナが演じる香織の父が大事にしていたC Dが出てくる。ケースだけで中身がない、それが荒木一郎のアルバム。香織が少しだけ口ずさむ「妖精の詩」は、観客がこの息苦しいまでの物語のなかに光明を見出す瞬間、エンドロールに流れるのが荒木一郎の「妖精の詩」の切なくも美しく、優しいメロディーである。
1971(昭和46)年、羽仁進監督が手がけた、日仏合作映画『妖精の詩』の主題曲として荒木一郎が作詞作曲、マイク真木と前田美波里が歌ったデュエット曲だった。1983年、荒木一郎が自作曲をセルフカバーしたアルバム「SCENE PHONIC」の1曲目に収録されている。
ピアノのイントロ、荒木一郎の囁くような歌声で、紡ぎ出される「妖精の詩」の物語は、映画『女たち』の美咲(篠原ゆき子)と香織(倉科カナ)、それぞれの物語を体感してきた観客にとって特別な意味を持つ。歌詞の一つ一つが、彼女たちの心とシンクロして、感情が一気に溢れ出してくる。
この映画『女たち』を通して「妖精の詩」が新たな生命を吹き込まれ、2021年の観客に届けられる。この「妖精の詩」を、本作のイメージソングとして、新進気鋭のシンガーソングライター・Little Black Dress がカバーしている。2019年にインディーズデビューした彼女は昭和という時代が生み出した「歌謡曲」を次々とカバー、新たな生命を吹き込んでいる。時にはストレートに、時にはその曲からインスパイアされた感覚で「歌謡ロック」として歌い継いでいる。荒木一郎の世界をLittle Black Dressがどう歌っているか、ぜひ体感して頂きたい。
現在公開中の映画『女たち』のエンドロールでもLittle Black Dressヴァージョンが上映されている。半世紀前に生まれた「妖精の詩」が、次の世代によって歌い継がれていく。文学が読み継がれるように、歌もまた「生き続けてゆく」のである。
*映画『女たち』のLittle Black Dressヴァージョンの本編は、TOHOシネマズ シャンテの最終回にて上映中!
日本映画界を代表するプロデューサー奥山和由が、 初めて女性のために製作した映画『女たち』は、コロナ禍でふさぎ込んだ時代に風穴を開ける衝撃の最新作。自然豊かな緑が眩(まぶ)しい山あいの小さな田舎町を舞台に、それぞれに事情を抱えた女たちが繰り広げる、ギリギリの女たちの生き様を描いた映画。
篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズら女優達の魅せる熱演が話題となり、映画評論家や著名人などから数多くの賞賛コメントが到着。各方面で大きな反響を呼んでいる。 映画『女たち』は、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開中!