日時:10月19日(月)
場所:札幌グランドホテル別館2F グランドホール東
登壇者:波瑠、安田顕、桜木紫乃、武正晴監督(※リモートでの登壇)
映画『ホテルローヤル』が11月13日より全国公開となる。原作は累計発行部数100万部を超える桜木紫乃の直木賞受賞作。メガホンをとるのは、『百円の恋』や『嘘八百』、昨年のNetflix国内視聴ランキング1位を獲得した「全裸監督」など精力的な活動を続ける武正晴。脚本は、連続テレビ小説「エール」を手がけた清水友佳子。主人公であるホテル経営者の一人娘の雅代には、映画やドラマで圧倒的な演技力と存在感を示す波瑠。桜木自身を投影した役を、繊細さの中に意志の強さを感じさせて好演。共演には松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣、伊藤沙莉、岡山天音ら実力派俳優陣が名を連ねます。誰にも言えない秘密や孤独を抱えた人々が訪れる場所、ホテルローヤル。そんなホテルと共に人生を歩む雅代が見つめてきた、切ない人間模様と人生の哀歓。誰しもに訪れる人生の一瞬の煌めきを切り取り、観る者の心に温かな余韻と感動をもたらす。北海道が舞台で全編北海道(札幌・釧路)で撮影された本作。この度、撮影の地で北海道凱旋報告会を実施。波瑠、安田顕、原作者である北海道出身の桜木紫乃、武正晴監督(リモートでの参加)が登壇するトークイベントが開催された。
2019年5月〜6月に北海道の札幌と釧路で全編撮影が行われた本作。撮影から1年以上が経ち、北海道の地で再び顔を合わせた。波瑠は「最近は皆さんの前に立って挨拶をさせていただくことが減ってしまってすごく寂しいなと感じていましたが、今日は皆さんの前でお話しすることができて嬉しいです」、安田は「北海道を舞台にした物語で、北海道で撮影された作品に、北海道出身の私がこうやって参加できることを本当に嬉しく思います」、原作者の桜木は「直木賞から7年経って、映画として新たにお届けすることができました。武監督、ありがとうございました。波瑠さん、安田さんと一緒に今日を迎えられたこと、本当にありがたいことだと思っています」とそれぞれ万感の思いを語った。
波瑠はオファーを受けた時のことを、「7年前に直木賞を受賞された時にすぐに買って読みました。映画化するというお話をいただいた時に、印象に残っていた作品なので、すぐに『ありがとうございます。受けさせていただきます』と返事をしました。台本を読んでみると、雅代は主人公ですが、物語の色々な出来事を端っこで眺めているような、主張がなかなか見えてこない女性。台詞も「……」が多く、ただ立っているだけになるのではという不安もありましたが、雅代とホテルローヤルの物語の中に一つ一つ普遍的にあるものを見つけられたらと思いながら挑みました」と語り、原作への思いの丈と、雅代というキャラクターをどう演じたのか役作りに関して振り返った。前々から桜木のラブコールを受けていたという安田は、「随分前から桜木さんに『もし私の作品が映画化することがあったらぜひ出てくだいね』とありがたい言葉をいただいていたんです。俳優としてこの作品に呼んでいただいて、本当にありがたく思っています」と出演理由を明かし、桜木に感謝を述べた。
映画を観て「映画という表現に書き手の内面を素っ裸にされたような気持ちになった。脱がせたつもりが脱がされていたー」とコメントをした桜木は、一言「悔しかったんです」。それに応えるように武監督は、「桜木さんの作品を片っ端から読んで、全てを取り入れました!」と桜木のあらゆる文章からヒントを得ていたことを明かし、「原作のオムニバスは非常に映画的な題材だと思いました。素晴らしい原作のエッセンスをできるだけ損なわないようにシナリオにするのが難しかったです。北海道で撮影するというのが目的でもありました。それが映画の大きな力となりました」と映画化にあたり意識した点、そして北海道で撮影することの意義を語った。
最後に、波瑠から「私が演じた雅代は自分の生まれた環境に疑問を持っていて、それと同時に嫌悪感みたいなものも抱いていて、ものすごく葛藤した思春期を送っています。結果的に親の後を継ぎホテルの女将になっていきますが、自分の置かれている状況にうんざりしています。さらにはその状況を変えることもしない自分に一番うんざりしていているんです。そのような一人の女の子が初めて自分の人生を肯定して、自分の足で歩み、自分の色で人生を彩って生きていきたいと思う瞬間がこの作品にはあると思っています。観てくれた人の背中をそっと押してくれる作品になっています」、安田から「切ないんだけど、じわっと温かい涙が出てくるんです。余貴美子さんと斎藤歩さん夫婦や、内田慈さんと正名僕蔵さん夫婦のシーンなど、切なくてでも温かくてとてもいいんです。このような状況の中で、北海道を舞台にした作品を上映できること心から嬉しいです。北海道の人には、ぜひ観てほしいです」、桜木は「私は無意識に書いていたけれども、映画を観て改めて、積極的に逃げるということは、とても前向きなことなんだなと教えられました。北海道から出発する物語。前向きに歩いていきたいと思える作品です」、武監督は「30年のホテルの物語です。映像というのは、『1スジ、2ヌケ、3ドウサ』という教えがありますが、桜木さんの原作があって、北海道という風景があって、素晴らしい俳優が揃いました。こういう映画ができて本当に幸せです」と、映画の公開を楽しみにしている人に向けての見どころや、この作品を通じて伝えたいメッセージなどそれぞれの熱い思いを語った。