日時:7月4日(土)
場所:渋谷HUMAXシネマ
登壇者:上村侑、黒岩よし、内藤瑛亮監督
6月1日よりユーロスペース、テアトル梅田で公開された『許された子どもたち』は、新型コロナ対策で劇場の客席を半数に減らした中で、連日満席が続出する大盛況となっている。この好調の波は止まることなく、6月26日(金)より新宿ピカデリー、27日(土)より渋谷HUMAXシネマにて上映中の本作は、コロナ禍にも関わらず6月1日(月)の公開より一か月で動員5000人を突破した。公開当初は2館からスタートした本作だが、現在では32館まで上映が決定するほど大ヒット中だ。またこれまでは新型コロナウィルス拡散防止を考えキャストの登壇は控えられてきたが、渋谷HUMAXシネマへのムーブオーバー、渋谷エリア公開延長決定を記念して、7/4日、主演の上村侑、そして母親役を演じた黒岩よし、そして内藤瑛亮監督を迎え、キャスト登壇による初の舞台挨拶が行われた。
■最初の挨拶
(上村)このような状況下で皆さまに挨拶ができる事が本当に嬉しいです。最大の注意を払いながら、本日の舞台挨拶を楽しんでいただけたら幸いです。
(黒岩)皆さん、ご来場いただき本当に有難うございます。皆さまが足を運んでくださっているからこそ、こうして自分たちが舞台に立ています。本当に有難うございます!!
(監督)公開から一か月経って、ようやくキャストを迎えた舞台挨拶を行う事が出来ました。主演の上村くんは今回、映画初主演で、舞台挨拶も初だと聞いていたので、本作でこうした場を設けてあげたいと思っていたのですが、コロナの影響でなかなか叶えてあげられず、今日こうして実現できたことがとても嬉しいです。
■オーディションについて
(上村)監督に最初にお会いしたのは、監督の前作「ミスミソウ」のオーディションだったのですが、その時はまだ印象があまりなかったのですが、本作「許された子どもたち」の撮影前に行われたワークショップでお会いした際、監督が先生のような一面を見せてくださり、とても接しやすい雰囲気を作ってくださったので、とてもやりやすかったです。
(黒岩)実は、2016年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭に遊びに行っていた際、監督の「ドロメ」が上映されていて、とても面白い作品だなと印象に残っていたんです。しかし、本作「許された子どもたち」のオーディションに参加した時には、あの「ドロメ」の監督と内藤監督が同一人物だとは知らず、オーディション後に知って縁を感じました。
(監督)上村くんは、体格が良くて眼光も鋭いけど、一時、学校に行けなくなったことがあるほど繊細な一面を持っていると分かり、荒々しさと繊細さが共存した主人公に相応しいと思いました。そして上村くんは受け答えがしっかりして、行儀が良い印象があり、本作は1年がかりの長期間で撮影することが決まっていたので、彼なら一緒にやっていけそうだなと思ったのも決め手ですね。
黒岩さんは、ソウルオリンピックにも出場した元スポーツ選手で、そのせいかゴールに向かってまっすぐに進むパワーを感じて、主人公の母親・真理(まり)が持つ愚直な点と共通していたので、キャスティングしました。
■撮影中のエピソード
(上村)夏編の撮影はとても楽しかったのですが、冬編の撮影はクラスの皆が僕(主人公の市川絆星)に罵声を浴びせるのが、精神的にきつかったです。
(監督)上村くんに限らず、本作には素人の子供も多数出演しており、いじめのシーンなどで精神に支障がないよう、カウンセラーの方にも撮影に入っていただき、子供たちのケアを重視しながら撮影していきました。
(黒岩)私も夏編は母親の真理が<自分は正しい>と思ってひたらすら頑張っているシーンだったので楽しかったのですが、冬編は加害者家族として誹謗中傷や疎外感を受けるシーンだったので孤独感が増していき辛かったですね。また体力的には、真理が襲われて逃げ、疲れ果て、気絶して座り込むシーンがあるのですが、タイムラプスで夜中から夜明けまで本当に同じ位置に座って撮影を行ったのですが、あれはきつかったですね。本当に気絶出来たらよかったのですが(笑)
■映画が上映されてからの周りの反応は?
(上村)6月1日の公開初日に家族が見に来てくれたんですが、帰りの電車の中で父親が一言も口を聞いてくれなくて。その後も映画について何も語ろうとしなかったんです。でも公開から一か月たって、最近、父がようやく映画の話をしてくれて、「同級生を殺しながら、罪を否認し、少年審判に無罪に相当する「不処分」を決定された主人公の絆星を、どういう目線で見たら良いのか分からなかった」と言われました。「映画の中の父親の目線なのか、演じている上村侑の父親なのか、脳みその整理がつかなかった」と言っていました。
(監督)オーディションでも、参加した俳優に「自分の子供が殺人を犯したらどうしますか?」と質問すると、男性は「なんて言っていいのか分からない」と答える方が多かったのですが、女性は、「それでも一緒に生きていく」と答える方が多かったんです。
なので上村くんのお父さんもどうしていいのか分からなくなった気持ちはよく分かります。
(黒岩)これまでアクションがある役が多かったのですが、今回、普通の母親を演じさせてもらって、周りからすごく絶賛してもらえました。是非たくさんの人に見て欲しいと周囲の方がSNSで本作品を拡散してくれるなど、色々と協力してくださっているのがとても有難いです。
■最後の挨拶
(上村)この映画はフィクションでありがなら、現実とつながる問題点がリアルに描かれていると思います。その問題点に対して、自分なりに考えるきっかけとなってもらえれば嬉しいです。
(黒岩)本作は、実際に起きた少年犯罪を元に監督が作り出した物語(フィクション)ですが、大切な人がもし映画のようなことになったらどうするのか考えて欲しい。大切な人を守るためにも、こういう問題に関して持って欲しいです。是非、大切な人に本作を薦めてください!!
(監督)本作が公開される頃、コロナ禍の自粛警察や誹謗中傷で命を絶った木村花さんのニュースなど、この映画とリンクする点が多くぞっとしていました。人はいじめに関して被害者側の立場で考えることはあると思いますが、自分が加害者や、加害者家族の立場になった事をあまり考えようとしません。加害者になることの方が確立的には高いのに、その可能性を考えることを避けてしまいます。矛盾していますよね。だからこそ本作をご覧いただき、加害者になるかもしれない怖さに向き合い、この問題を考えるきっかけになってもらえると幸いです。