日時:6 月 29 日(月)
場所:アーツ千代田3331
登壇者: 松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、ふくだももこ監督
ふくだももこ監督最新作、映画『君が世界のはじまり』が、7月31日(金)より、テアトル新宿ほか全国ロードショーとなる。2016年に短編小説「えん」で第40回すばる文学賞佳作を受賞。映画や舞台、ドラマの演出も手掛け、もはやジャンルのボーダーラインを軽々と飛び越え、新時代の先頭に立つカルチャーアイコンの一人となりつつあるふくだももこ。彼女の原点である2 本の短編小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を再構築し、一本の映画にするというプロジェクトが実現しました。ふくだ監督にとっての「特別な物語」を託した脚本家は、『リンダ リンダ リンダ』、『もらとりあむタマ子』、『愚行録』など、その時代に傑出する話題作を手掛けてきた鬼才・向井康介。「40 歳を越えて、もう青春映画を書くことはないと決めていた」と語る円熟の脚本家が、ふくだ監督の言葉のひとつひとつに突き動かされ、青い春のその瞬間にしか存在しないヒリヒリするようなエネルギーを新たなストーリーに結実させました。主演には、『おいしい家族』(19)以来、ふくだ監督と二度目のタッグとなる松本穂香を迎え、魂を焦がす青春映画の新たな傑作がここに誕生した。本作の公開を記念して、文学から映画、ドラマ、演劇と多岐にわたる活躍を続けるふくだももこの 2本の短編小説を再構築し、ふくだ自らメガホンを握り、松本穂香を主演に迎えて映画化した『君が世界のはじまり』の完成記念トークイベントが6 月 29 日(月)に開催された。松本穂香、中田青渚、片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい、ふくだももこ監督が出席し、高校時代のエピソードなどたっぷりと話した。
監督・キャスト含めて久しぶりの勢揃いとなった彼ら。早速、素の自身について、主人公・えんとは「全然違う」と語る松本。どちらかというと、片山が演じた、父親にきつい態度をとってしまう女子高生・純に近いそうで「私も、親に対してモヤモヤしたり、言葉にできないイライラじゃないけど、愛情があるからこそツンツンしちゃうところがありました」と意外な告白をし、共演陣からは驚きの声が上がる。当の純役の片山は、松本の言葉に驚きつつ「私自身、ファザコンなので現場に入る前は(父親が)かわいそうだなと思っていたけど、入ったら『かわいそう』って感情はなくなりましたね」と明かし、笑いを誘っていた。
撮影現場はみんな仲が良く、和気あいあいとしていたようだが、松本は、一緒のシーンが多かった中田が「ずっと(役柄の)琴子でいる感じだった」と指摘し、甲斐は「(現場で)叫んでたもんね(笑)。アッパーだったね」と証言。中田は恥ずかしそうに「緊張してて、オンとオフの境目がなくなるのが怖くて、琴子でいることが多かったです」と明かしていた。
松本は、ふくだ監督とは『おいしい家族』に続いて 2 作目のタッグとなったが、ふくだ監督は「若いキャスト、経験の少ない子も多かったので、穂香ちゃんにもちょっと私のほうに来てほしかった」と現場で女優としてだけでなく演出側の目線を持つことを要求したという。松本は「(前作とは)準備段階から全然違って、前回は話し合わないのが正解だったと思うけど、(前作のプロモーションなどで)一緒に映画祭に行ったりして、人としての関係性が深くなってからの 2 作目だったので、今回は違うやり方がいいんだなというのが言わなくてもあって、自然とそうなった」と振り返る。
ふくだ監督からはたびたび、シーンや登場人物の気持ちなどについて相談される機会が多かったそうで、ふくだ監督は「(監督が)何を言っても、(松本さんは)やってくれるという信頼があった」と称賛の言葉を口にしていた。劇中、登場人物たちが真夜中のショッピングモールでブルーハーツの楽曲に乗って感情を爆発させるという青春満開のシーンがあるが、甲斐は「感情大爆発というシーンで、緊張感もあって、精神的にも肉体的にも疲れるし、撮り終えた時、山登りが終わったような感じがあった」と述懐する。そんな熱いシーンで最もノリノリだったのは誰か? という問いに甲斐は迷わず隣に立つ金子を指さす。金子は「らしいです(笑)。楽しい気持ちや怒り、いろんなことを曲に乗せて爆発させるシーンだったので、すごく緊張感がありました」と振り返る。
普段、ミュージシャンとして活動している小室も「普段(の活動では)、あまり暴れるようなことはないし、あそこまではやらないので楽しかったです。みんなすごかったですね。純さんとか…(笑)」と明かし、これには純役の片山さんは「恥ずかしいですね…」と照れくさそうに笑みを浮かべていた。
また、キャスト陣はそれぞれどのような高校生だったか? 劇中の登場人物たちのように“一方通行”を感じるようなことはあったか? という質問に、小室は「軽音部でバンドをやってたんですけど、誰も見に来ないので寂しかったです」と意外な告白。松本は、小室の言葉に深く共感したようで「私は演劇部だったんですけど、隅っこの視聴覚室でひっそりとやってました。体育館でやっても、音響が悪すぎて全然届かず、ジタバタしてるだけなんです(苦笑)」とまさに一方通行の苦しみをしみじみと明かす。「冷凍マグロの役をやったり、アニメ好きの子が考えた脚本で、私がベルを鳴らしたら時が止まったり…(笑)。でも、人が少ない中でそれでも一生懸命やっていました」と青春時代をふり返った。
また、事前にオンライン試写を観たフォロワーから寄せられた「みなさんにとって、“世界のはじまり”と思える人は?」という質問に、甲斐は「常にいろんな人に出会うたびに、いろんなものを吸収したり影響されます。いま、ここにいるってことは、それまで出会った人のおかげなのではないかと思います」と語り、これに一同深く同意。松本は「もう(そういう人に)出会っているのかもしれないし、これから出会うのかもしれない。後になってそう思うのかもしれないですね」とうなずいていた。
最後に松本が本作について「全員が主役の映画です。こんなにしっかりとひとりひとりが描かれている映画は他にはないんじゃないかと思います」とアピールし、トークイベントは幕を閉じた。