いよいよ今週末、6 月 26 日(金)より新宿シネマカリテ、ホワイト シネクイント、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開となる『SKIN/スキン』。先日、長編の前に制作された『SKIN 短編』が、公式 HP にて緊急配信されたところ、一週間で 17,725 ビューの大きな反響を呼んだが、今回、公開直前に、本編からの抜粋映像を使用した特別映像が解禁となった。
差別主義者を社会は赦すことができるのか―
ヘイトと闘い、時に手を差し伸べる男、ダリル・L・ジェンキンススキンヘッドに差別主義者を象徴する無数のタトゥー。白人至上主義者に育てられ、憎悪と暴力に満ちた生活を送っていたブライオンは、シングルマザーのジュリーと出会い、これまでの自分の悪行を悔い、新たな人生を始めようと決意する。しかし脱会を許さないかつての同志たちから執拗な脅迫、暴力を受けることとなり、ジュリーたちにもその矛先は向き始める…。
この度、解禁された特別映像には、レイシズム団体のリーダー、クレーガーが川べりで遊ぶ貧しい子供に声をかける映像が映し出される。白人貧困層の子供をスカウトしてレイシズム団体に入団させるというこの手口は、本作の主人公、ブライオン・ワイドナーの出自と重なるものだ。ブライオンは、このリーダー夫婦に引き取られ「家族」の一員となり、レイシズムと暴力が当然のものとして育てられてきたのだ。
また本作で、ブライオンの更生に大きな役割を果たす男が、次に登場するマイク・コルター演じるダリル・L・ジェンキンス。ヘイト・グループやそれに属する個人の情報を記録し公開することで匿名性を剥ぎ、その存在を世間に知らしめる活動を 20 年以上続けており、反ヘイト NGO「南部貧困法律センター (SPLC)」にも協力している。本作は実話を基にした作品だが、このジェンキンスも実在する人物で、現トランプ政権下でますます力を帯びてきたレイシズムに抗う活動を今も積極的に行っている。反人種差別デモの高まりに際しての、トランプ大統領による「アメリカ合衆国はアンティファをテロ組織に指定する」というツイートには、「なんの弁明も躊躇もなく言おう、私はアンティファだ(#IAmAntifa)」と応じた。
更生を決意するブライオンだったが、レイシズム団体から脱することは、そう簡単ではない。執拗に脅され、時には銃撃され、生死の境をさまよう。そんな状況の中で、ブライオンが公衆電話から助けを求めた先が、本来反目するはずの男、ジェンキンスだった。果たしてブライオンはジェンキンスの力を借りてどのような人間に変わっていくのか?
先日、緊急配信され大きな反響を呼んだ『SKIN 短編』では、レイシズムの終わることのない暴力の連鎖を描いていたが、本作では、更生しようとする差別主義者を社会は赦すことができるのか、という負の連鎖を止めるための切実な問いが投げかけられている。コロナウィルス以後の世界でレイシズムの嵐がますます吹き荒れる昨今、本作を観ることは、現代社会を考える一助となるはずだ。