ふくだももこ監督最新作、映画『君が世界のはじまり』を2020年夏に全国公開されることが決定した。ふくだ自身が執筆しデビュー作ながらすばる文学賞佳作(集英社)を受賞した小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を、『リンダリンダリンダ』(2005)、『聖の青春』(2016)、『愚行録』(2017)など、数々の話題作を手がかける脚本家、向井康介が一つの物語に再編。ふくだが描いた若者たちの危うい魅力を一切損なうことなく、オリジナリティ溢れる物語へと昇華させ、青春映画の新たなマスターピースへと生まれ変わらせた。
主演には、『おいしい家族』(19)以来、ふくだ監督と二度目のタッグとなる松本穂香。NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)で主人公の同僚・澄子役を演じ、注目を浴びて以降『わたしは光をにぎっている』(19/中川龍太郎監督)や『酔うと化け物になる父がつらい』(20/片桐健滋監督)といった主演作が続くほか、CM「意識高すぎ!高杉くん」シリーズにも出演。若手最注目株の一人として活躍の幅を広げる彼女が、閉鎖された地方に生きる高校生2年生の少女・えんを等身大の魅力で演じる。
デジタル技術が全盛のいま、あえてフィルムで撮影されたティザービジュアルは、穏やかに差し込む光が、ティーンエイジャーならではの危うさと儚さを見事に表現。さらに、イメージクリップの映像では「自分だけ自由になりたいなんて、そんなんで人にやさしくなれるのかな」という少年の意味深な言葉とともに、松本が演じる少女・えんが、何かいいたげな表情で正面を見据えており…。寂れゆく町で燻る高校生たちの、危うく儚い青春映画がここに誕生した。
『君が世界のはじまり』イメージクリップ第1弾
https://youtu.be/aLXolCBTBIs
<コメント>
■主演:松本穂香
青春時代って、一瞬すぎるからなのか、どこか記憶がぼんやりしている。大切な瞬間が溢れてたはずなのに、記憶が抜け落ちてる。だけど、多分、その時感じた切なさやあたたかさは、ずっとずっと心の中に感触として残ってるんだと思う。恥ずかしいぐらいまっすぐだった私たち。過去があって、今がある。私たちはずっと、何かに向き合いながら、苦しみながら生きてきた。そんな当たり前のことに救われる気がする。だから大丈夫。私たちは大丈夫。
ダサくても痛くてもいい。だから伝わるものがある。そんな気持ちでこの作品に挑みました。
■原作・監督:ふくだももこ
「君が世界のはじまり」のもとになった小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」は、私にとって、どうしようもなく特別な物語だ。
“青春”という箱の中に入れられるのを嫌悪していたあの頃の、胸を突き抜けて飛び出しそうなエネルギーが、すべての登場人物に詰まっている。この映画が、どこへも行けない、何にもなれない、そんな風に思っている誰かの、はじまりのきっかけになればいいと願っています。
私が書いた、ゴツゴツトゲトゲした岩のような小説を切り取り、石にして世に出してくれた人がいて、手に持てるよう丁寧に削ってくれた向井康介さんの脚本があって、一緒に磨いてくれた素晴らしいスタッフと、松本穂香をはじめとする、才能ある俳優たちがいる。すべての人の力を合わせて「君が世界のはじまり」は、誰も見たことのない、燦然と輝くたったひとつの宝石になった。どうかこのきらめきが、あなたの心を照らしますように。
■脚本:向井康介
40歳を越えて、もう青春映画を書くことはないと決めていた矢先に、佐々木史朗さんとの出会いがあり、“ふくだももこ”という若い作家の短編小説を知りました。二十代の書く文章に自分はもうついていけないだろうと思っていたのに、驚くほど心の中に入ってくる。なぜなのだろう? そんな疑問から、僕の中でこの企画は始まりました。
「ふくだ、君が晩年になって、人が作品を振り返ったときに『ふくだももこの初期の代表作と言ったらこれしかないよね』とみんなが肯くような映画にしよう」
何度目かの打ち合わせのあと、居酒屋で僕はふくだにそう言ったのを覚えています。とても小さな物語だけれど、この映画が生まれる一助を担ったひとりとして、本当にそんなふうに語り継がれるような作品になってくれたら嬉しいです。