日時:2019年10月5日(土)
場所:新宿ピカデリー
登壇者:松重豊、北川景子、濱田岳、山中崇、伊東四朗、細川徹監督
作家・ヒキタクニオが自らの体験を基に“男の妊活”を描いたエッセイ『ヒキタさん! ご懐妊ですよ!』が映画化!映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(東急レクリエーション配給)が10月4日(金)より全国公開を迎え、10月5日(土)に新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶を実施。主演の松重豊をはじめ、北川景子、濱田岳、山中崇、伊東四朗、細川徹監督が登壇した。
49歳の作家・ヒキタクニオ(松重豊)は、一回り以上年が離れた妻・サチ(北川景子)と仲良く楽しい毎日を過ごしている。子どもは作らずに二人だけでやっていこうと思っていたヒキタとサチ。そんなある日、サチから飛び出した「ヒキタさんの子どもに会いたい」という一言がきっかけで、ヒキタの生活は一変する…。医師からの「精子の8割は動いていない」という衝撃の宣告を受け、“男の妊活”がスタートするが…。
意外なことに本作が初の映画主演作という松重豊は、「朝早くからこんなにたくさんの方に来ていただいてありがたい限り」と感無量の面持ち。「今まで百何十本という作品に携わってきましたが、台本は転売などされないためにクランクアップの日に破り捨てていたんです。でも、この作品の台本は宣伝などもありずっとカバンの中にありました。今日終わったら破り捨てるつもりだったのですが、だんだん愛着がわいてきて。僕の棺桶に入れてもらおうかなと思っています(笑)」と本作への思いを語った。
松重演じるヒキタの一回り以上年下の妻・サチ役の北川景子は「不妊治療がテーマではあるのですが、例えばご結婚されていない方や不妊治療の経験がない方など色々な方に楽しんでいただける作品なので、幅広い層の方に見ていただきたいなと思っていたら、今日は男性も女性も、若い方もお子さんもいらっしゃって。たくさんの方にこの映画が届いたんだとうれしい限りです」と老若男女様々な観客が詰めかけた満員の客席を前に喜びを語った。
濱田岳は、主人公のヒキタとは違い、“受精大臣”というあだ名をつけられるほど子だくさんの担当編集者・杉浦役。「“受精大臣”という役名は参りましたよね~、なんて品のない!(笑)本当に温かくて悪人が出てこない作品なので、唯一のヒールとしてヒキタさんを追い込んでやろうと思ってやっていました(笑)」と場内の笑いを誘うと、濱田とはこれまで上司と部下、先生と生徒といった関係の役が多かったと話す松重は、「立場が対等な役だとこの男の小意地の悪さがものすごく鼻につきまして(笑)芝居はうまいし、違う現場では西田敏行さんらも手玉に取って!同年代だったら本当に嫌な奴だろうな、皆さん気を付けてくださいね!」と話すと、「なーんで営業妨害するんですか!あーびっくりしちゃうわ!」と濱田が返し、抜群の掛け合いを見せる二人によってさらに会場は盛り上がる。
ヒキタ夫妻の担当医を演じた山中崇は、撮影中の印象に残ったエピソードとして、「撮影最終日に、ヒキタさんとサチさんが夫婦になっていく姿を見て、お二人が愛おしくて。よかったなぁ、すてきな夫婦だなぁと思ったら、オールアップのカットがかかった時に感極まって泣いてしまったんですね。そしたら松重さんが「お前、泣くの!?」って(笑)」と回答。松重は「劇中の先生役の時は難しい医学用語を冷静に話す先生だったのに、カットがかかったら泣き始めて、大丈夫かなこの人は…と(笑)」とこちらも抜群の掛け合いで会場を盛り上げた。
また、サチの厳格な父親を演じた伊東四朗は、「皆さんはご不満かもしれませんね。私が(北川の)お父さんではなく、おじいちゃんじゃないの!?って!お父さんです!実生活では娘がいないので、うれしかったですね」と昨年の撮影を振り返った。
ここで、本作の物語の中でのターニングポイントとなる『ヒキタさんの子どもに会いたい』というサチの一言にかけて、“忘れられない一言”についての質問が。松重が挙げたのは、本作の撮影時に北川から言われた『そんなに年離れてましたっけ?』という一言。「この作品が始まる前に、北川さんと夫婦役に見えるか悩んでいた時に言われて。その一言に乗せられて今日まで来ました!」と語った。
北川は、19歳の時に森田芳光監督から言われたという『女優を辞めないでくださいね』という一言を挙げ、「当時は若いし、やる気もあるし、辞めないよ?という感じだったのですが、壁にぶつかった時に立ち返る言葉になっていきました」と明かし、濱田は、「演じる役柄のプレッシャーや難しさに悩んでいた時に、西田敏行さんから『僕はあなたのファンなので、のびのびしている姿を見せてください』と言われて。素直にうれしかったですし、頑張れと背中を押していただいた気がしました」というエピソードを披露。
山中は、「20代半ばの時に、人のオーラを見る占い師の方に『あなたは物事に真面目だけどオーラがない!人にとっての踏み台よ!』と言われたことが忘れられないです。ちょっとトラウマだったりします」と明かし、会場からは大きな笑いが起きていた。
伊東が挙げたのは、21歳の大学生の時に「アルバイトを辞めて芸能界に入ります」と言ったときの父親の『ふうん』という一言。「今思うとそこには「大変だぞ芸能界は」とか「早く稼ぐようになって俺をラクにさせてくれ」とか、万感の思いが『ふうん』に込められていた」と語った。
また、ここで、本作が11月7日から行われる第39回ハワイ国際映画祭のスポットライト・オン・ジャパン部門への招待が決定したことがMCから発表され、松重は「ハワイには行ったことないんですよ。ハワイ!やった!と思ってマネージャーに確認したら、「いや行きません」と言われて…」と少し残念がりながらも、北川とともに「ハワイの方にも楽しんでいただけたら」と語った。
最後に細川監督から、「妊活・不妊治療というセンシティブで難しいテーマだけに、映画が出来上がるまでにとても時間がかかりました。でも難しいからこそ映画にしたい。笑ったり泣いたりしてもらえる作品が作れたことが感激です。もしかしたら「見づらいかも」と思っている方がいるかもしれないので、「そんなことないよ」って言っていただけると嬉しいです!」と本作への思いが語られると、松重は、「興行成績とか動員とか意識せずに来たのですが…・昔、三谷幸喜さんと一緒に芝居をやっていまして、今ほど『記憶にございません』のあの男が目の上のたんこぶだったことはない!なんとか三谷幸喜をここでぶっつぶしてやりたい!(笑)」と意外な因縁を語り、場内は再度爆笑の渦に。「老若男女問わず、いろんな人がいろんな楽しみ方ができる映画だと思っています。気持ちが明るく、前向きになる映画です。ぜひ周りの方に宣伝していただけたら」と語り、映画さながらの温かい空気に包まれた舞台挨拶となった。