日時:9月24日(火)
場所:TOHOシネマズ 新宿 スクリーン9
登壇者:松尾スズキ、中山美穂、秋山菜津子、岩井秀人、坂井真紀、大東駿介、土居志央梨
「大人計画」の主宰・松尾スズキが監督・脚本・主演を務めた映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』が10月25日(金)にTOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開となる。これまで作家、演出家、映画監督、俳優など多岐にわたって活動を続けてきた松尾スズキが昨年大人計画30周年という節目を経て、31年目にして、また長編監督映画4作目にして初めて監督・脚本・主演全てに挑んだ本作。これは、30年間笑いにこだわり続けた喜劇人、松尾スズキの到達点。妥協なきR18復讐コメディが誕生した。監督・脚本・主演を務めた松尾スズキをはじめ、中山美穂、秋山菜津子、岩井秀人、坂井真紀、大東駿介、土居志央梨と、強烈で個性豊かなキャラクターを演じた豪華キャストが勢揃いした完成披露試写会が9月24日(火)に開催された。
『108~海馬五郎の復讐と冒険~』では、監督、脚本を担当し、さらに劇中では主演として素っ裸で大活躍を見せている松尾監督だが、映画を見終わったばかりの観客を前に「本日は私の、私による、私のための映画を、赤の他人であるみなさまに見せてしまい、本当にすみませんでした」といきなり謝罪からスタート!大東さんによると、登壇直前の舞台袖で松尾監督は「(客席の)中から音が聞こえないよ。大丈夫かな?」「静まり返ってたらどうしよう?」と初めての観客の前での上映を不安がっていたとのこと。観客の温かい拍手にホッとした様子を見せていた。
R-18指定のかなり“攻めた”内容となっている本作だが、物語の着想について松尾監督は「5年くらい前にあらすじを考えたんですが、ちょうど2回目の結婚をする時期で、それにあたって『結婚とは何だろう?』としみじみ考えていたらフッと降りてきたという夫婦の謎の物語です」と説明。「特に後半、脱ぐシーンが多いんで、演じる時は素っ裸で、素っ裸の自分を監督モニタ―で確認するんですけど、どうせまたすぐ脱ぐのに、どうしても一枚羽織りたい気持ちがあって…。そういうことの繰り返しが体力をむしばんでいきました…」と監督・主演の苦労(?)を明かし会場は笑いに包まれる。
松尾演じる海馬五郎の妻を演じた中山さんは、最初に脚本を読んでの印象を「正直、とっても面白いと思いました!」と語り、激しい内容に対して出演を躊躇する気持ちはなかったのか?との問いにも「実際に演じるときには多少ありましたが、内容(の面白さ)が勝ってしまい、面白い!やりたい!となりました」とニッコリ。松尾監督との共演について「芝居を始めると、パッションが熱い感じで出てきて、日に日にかわいいと思うようになりました」と明かした。
高級風俗嬢のあずさを演じた土居さんも、松尾監督について「本当にかわいらしい方だなと思いました。カワイイおじさんです」と女優陣は口々に松尾監督について“かわいい”を連呼。「私は大学の時、松尾さんの戯曲を上演したりしてて、そんな人を『ジジイ』とか『もじゃもじゃおじさん』とか呼んで、いいのかな…? と(笑)」と感慨深げに語っていた。
松尾監督とは30年来の付き合いである秋山さんは、現場での松尾さんについて「裸のシーンが多かったけど、ちゃんとガウンを着て(監督として)カメラの前にいて、エネルギッシュで『これはいい作品になる』と確信しました」と自信を口にし、岩井さんは「こんなに前貼りをするために行列ができている現場はいままでなかった(笑)」と現場をふり返りつつ、撮影初日の松尾さんの雄姿に言及。「現場に行ったらすぐに一番ハードな自分で歌って、自分で踊って、カウンターから飛び降りて…というシーンをやって、これはとんでもない覚悟の表れだなと思ったけど、その後、ガス欠で具合悪そうにしてて(笑)、それも含めてさすがだなと思いました」と感服する。
五郎の妹役を演じた坂井さんは「眉毛を松尾さんに似せて、毎日書いてました」と明かし「私の役は、とにかく気持ちで一生懸命やらなきゃと思って、本当にお兄ちゃんを心配する気持ちでした。松尾さんは監督と主演でとても大変なので、そこでも『お兄ちゃん、頑張れ!』という気持ちでいました」と語った。ホスト役を演じた大東さんは、劇中で被っているかつらが、松尾監督の指示で実は2段重ねになっていることを明かし「以前、松尾さんと舞台でご一緒して、楽屋で『実はこういう話をやろうと思ってる』と聞いて、僕は『何でもやります!』と言ったんですが、松尾さんがそれを覚えていて下って『何でもやるんだったら、かつら2個くらい乗っけられるだろう』ということで(笑)、こういう役をいただきました」と満面の笑みで語っていた。
この日は、海馬五郎の無茶な復讐劇にちなんで、登壇陣にそれぞれ無茶をした経験を尋ねたが、中山さんは「私は無茶だらけの人生だったので(苦笑)、みなさんにお話しできるようなことは何もないんですが…」と意味深な(?)発言で会場をわかせ「昨日、カレーを作ってて火傷しちゃいました」と告白。これに松尾監督が「カワイイ」と反応すれば、岩井さんからは「それは無茶ですよ(笑)!」とツッコミが入り、会場は再び笑いに包まれる。中山さんは「この映画に出たことも無茶のひとつですかね…(笑)?」とまとめ、これには松尾監督も「すいませんでした(苦笑)」と平身低頭だった。
最後に松尾監督は「5年間の構想ののちにやっと今日、日の目を見ました」としみじみと感慨にふけりつつ「5年考えて、10日で打ち切りとかなったら、死んでも死にきれないので…」と自虐的に語り、SNSがひとつの重要な要素である本作について「SNSが功を奏するような感想をぜひ、つぶやくなり、バエるなりして頑張ってください!」と集まった観客に懇願。客席からは温かい拍手がわき起こっていた。