日時:3月26日(火)
場所:ユーロライブ
登壇者:新谷洋子(音楽ライター)、門間雄介(編集者/ライター)
『君の名前で僕を呼んで』の繊細な演技で世界中を魅了した、今一番ホットな男ティモシー・シャラメが出演する『ビューティフル・ボーイ』が4月12日(金)より公開となる。8年という長い歳月をかけてドラッグ依存を克服し、今やNetflix「13の理由」の脚本家として活躍する人物と、彼を支え続けた家族の物語。音楽ジャーナリストの父親デヴィッドと、息子ニックがそれぞれの視点から描いた2冊のベストセラー回顧録が原作。愛のちからで人は、何度でもやり直すことができると力強く胸に迫ってくる珠玉の人間ドラマだ。音楽ライターの新谷洋子、編集者/ライターの門間雄介をゲストに迎え本作の上映イベントが実施された。
4月12日(金)より公開となるティモシー・シャラメ出演最新作『ビューティフル・ボーイ』の試写会が26日実施され、上映後のトークイベントに音楽ライターの新谷洋子、編集者/ライターの門間雄介が登壇した。
『君の名前で僕を呼んで』で世界を魅了し、一躍スターへと名乗り出たティモシー・シャラメの出演最新作。今回『ビューティフル・ボーイ』で9キロもの減量をして挑んだというティモシーの役作りについて、門間は「人気・ルックスだけではない、実力派としての一面を、今回存分に見せつけられた」と語り、新谷も「『君の名前で僕を呼んで』の時は初々しい感じもあったけど、そこからさらに成長して間違いなく一つ上に行った印象があります」と絶賛した。しかし、二人は実は父親役を演じたスティーヴ・カレル派だったようで、米ドラマ「ザ・オフィス」の印象から新谷は「コメディの人という印象を持っていたけれど、あんな繊細な役を演じるとは!」と驚きを隠せない様子。
本作のタイトルは、主夫生活中だったジョン・レノンが自身の当時5歳の愛息・ショーンへ贈った楽曲「ビューティフル・ボーイ」からきたもので、劇中でもスティーヴ・カレル演じるデヴィット・シェフが子守唄として口ずさむシーンで登場する。デヴィット・シェフ本人は音楽ライターとして現在でも活躍している人物。新谷は、デヴィットが24歳の時に行ったジョン・レノンへのインタビューの記事は、3週間に渡り生活を共にしながら書き上げたものであり、ジョン・レノンが亡くなった3日後に掲載されたというエピソードを紹介。取材依頼が殺到する中で、生前最期のインタビューを実施したデヴィットのことを「敢えて、まっさらな状態の若い人を(ジョン・レノンは)インタビュアーとして起用したんですよね。不思議な縁ですよね」としみじみ語った。
ジョン・レノンだけでなく、ジャンルも年代も非常に幅広い様々な音楽が使用されていることも話題になっている本作。『君の名前で僕を呼んで』のサウンドトラックCDにライナーノーツを寄稿した新谷は、プレイリストをみるだけで作品の全体的なイメージが湧く『君の名前で僕を呼んで』の音楽と違い、本作では「映画を観て初めて、何でこの曲が使われているのかがわかります」と表現。中でも特に印象的だった音楽として、ティモシー演じるニックが、大学生となり希望に満ちたスタートをするところから再び堕ちていくまでを描いたシーンで流れるシガー・ロスを挙げた。彼らの音楽を「生と動のコントラストが激しい音楽がドラマティックで予測がつかない」と表現する新谷は、「絶妙なタイミングの転調が、映像とシンクロして上手いなぁと思いました。ハイになるシーンで音楽も盛り上がる」と唸る。
また、父・デヴィットと息子・ニックの過去と現在が入り混じるシーンで流れるニルヴァーナの楽曲についても言及。新谷は、「昔と今を曲でつないでいるのが凄い」と絶賛。門間も「音楽をいかにシーンとシンクロさせるか、映像と繋いでエモーションを生み出すかっていうことに長けた監督」「時系列を巧みに構成して、編集の力によって観客に何らかの感情を芽生えさせるのが匠だなぁと思った」と音楽の使い方はもちろん、本作で初の英語作品を手掛けるベルギー人の監督、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンの編集の手腕に舌を巻いた。