映画好きな方ならば、「カメオ出演」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。「カメオ」とは古代ギリシア地方で流通していた大理石などに彫刻を施した装飾品・工芸品の事である。(英語のcameoには「名場面」「山場」という意味もある)。ハリウッド映画では、作品に深い縁のある人物や、その作品を象徴するような人物をほんの少しだけ登場させ、箔をつけることを「カメオ出演」と呼ぶのだ。映画監督が自身の作品に脇役で出演するのは典型的なカメオ出演であり、昔から映画によく出る監督というのも珍しくない。
昨年11月12日に亡くなられたmarvel作品の生みの親であり、アメリカンコミックの父スタン・リー氏は、数々のmarvel作品にカメオ出演しているのはあまりにも有名。『スパイダーマン3』(07)でタイムズスクエアでピーターに助言を与える聡明な老人や、『アイアンマン3』(13)では美人コンテストの審査員役で嬉しそうに満点の札を揚げるスケベおやじを演じるなど、役の幅は実に多彩で、marvelファンは新作映画が公開されるたびに、スタン・リーの出演シーンを発見するのが楽しみの一つとなっていた。
また、イギリスの巨匠映画監督アルフレッド・ヒッチコックも、自身が監督したほとんどすべての映画にカメオ出演することで有名。1927年の『下宿人』から1976年『ファミリー・プロット』まで合計約38本に渡って出演を果たした。
また、アメリカの映画監督、マーティン・スコセッシも自身の監督作品に多く出演している。『タクシードライバー』(76)や『グッドフェローズ』(90)など、スタン・リーの作風とは正反対の少し暗くシリアスな描写が特徴だが、実は自身の映画にカメオ出演として多く出演しているのだ。
最後にご紹介するのは『シックス・センス』(99)などの“どんでん返し”が代名詞でサスペンス映画界のレジェンド、M.ナイト・シャマラン監督だ。彼もカメオ出演で有名だが、現在公開中の最新作『ミスター・ガラス』にも、劇中のどこかに出演しているとのこと!本作は『アンブレイカブル』(00)の主人公、不死身の肉体を持つデヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)と非凡なIQと生涯で94回も骨折した壊れやすい身体を持つ“ミスター・ガラス”(サミュエル・L.ジャクソン)、そして新たに登場する24もの人格を持つ多重人格者“ケヴィン”(ジェームズ・マカヴォイ)がフィラデルフィアのある施設に集められるところから始まるサスペンス・スリラー。彼らの共通点は“自分が人間を超える存在=スーパーヒーロー”だと信じていること。精神科医のステイプルはすべて彼らの妄想であることを証明しようと、決して足を踏み入れてはならない“禁断の研究”を行う。そして最後に驚くべき結末が待ち受ける…という作品だ。ダークな雰囲気が漂う本作では、冒頭シーンでカメオ出演としては、かなり長めのセリフでバッチリ出演している。普段カメオ出演の場面を見逃してしまう方でも、今回は比較的探しやすいため、見つける楽しみも含めて観に行くと映画の楽しみ方がまた一つ増えるのではないだろうか。