日時:12月19日
場所:ニッショーホール
登壇者:上野水香(東京バレエ団プリンシパル)
MC:八雲ふみね (映画パーソナリティ)
天才振付家モーリス・ベジャール没後10周年にあたる今年、ベジャールの代表作のひとつ「第九交響曲」の舞台裏を捉えた感動のドキュメンタリー『ダンシング・ベートーヴェン』がいよいよ12月23日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他にて公開!21世紀のバレエ史上最高傑作と呼ばれながらも2007年のベジャール亡き後、再演は不可能とされてきた「第九交響曲」。しかし2014年に東京バレエ団創立50周年記念シリーズ第7弾として、東京バレエ団とモーリス・ベジャール・バレエ団の共同制作という空前絶後の一大プロジェクトが実現!本作は、総数80人余のダンサーに、世界的指揮者ズービン・メータ率いるイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、ソロ歌手、合唱団を加え、総勢350人に及ぶアーティストの力を結集した、その舞台裏に密着した感動のドキュメンタリー。公開に先駆けて、12月19日(火)試写会を実施。この奇跡のステージにメインダンサーの一人として出演した東京バレエ団プリンシパルの上野水香を迎えて舞台挨拶を行った。日本でただ一人、モーリス・ベジャールに直接指導をうけ、かの「ボレロ」を踊ることを許された女性である上野ならではのベジャールとの思い出、そして本作の魅力など貴重な話も次々語られたイベントとなった。またあわせて本作が今年度のスペイン・ゴヤ賞最優秀ドキュメンタリー部門にノミネートされたことも発表された!
上野水香はまず本作を観たときの感想を「(当時)こんなことやったなぁ、とあの時の記憶が蘇りました。本作はモーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団の共同制作という形で公演が実現する過程を追ったドキュメンタリーですが、貫いているのは“大きな愛”だと思いました。現在のベジャールバレエ団の芸術監督をされているジル・ロマンも愛情深い方で、ベジャールの作品に対しても、またダンサーやバレエそのものに対する大きく深い気持ちをいつも感じていました」と上野。
また実際に直接モーリス・ベジャールから指導を受けたことがある上野は「ベジャールさんの作品『ボレロ』を踊った時に直接指導を受けたことがあります。最初、写真の印象だと怖い方なのかなと緊張していたけど、お会いしたらとても穏やかで、細かい指導をしてくださって。お手本として踊っていらっしゃるのを見ると、どんどん引き込まれていくのがベジャールさんの眼なんです。あのベジャールさんの青い眼、とても奥深くて海や空が広がっていくようで、それがなによりも印象に残っています。」と当時を振り返る。
さらに、「ベジャールさんのバレエは古典だけでなくコンテンポラリーの要素も入っている、まさしく“ベジャールさん”というジャンルなのではないかと思える独特の振付をされていますが、彼から一番最後に言われたことはクラシックのベースになる基礎の部分を絶対に崩さないで踊ることが大切で、そう踊ってほしい、と言うことでした」と上野ならではの思い出を語った。
続けて「第九交響曲」については「2つのカンパニーが一緒に舞台にたち、ズービン・ベータ氏率いるイスラエルフィルが一同に介する壮大なイベントで、話を聞いたときには鳥肌が立つほどでした。普段の公演で生演奏の場合はオーケストラピットで演奏するのですが、それとは異なり、本公演ではオーケストラと合唱団が舞台の上後方の台にのるという形なんですね。踊っていると後ろから音楽が聞こえてきて、まるで音に包まれている、不思議な感覚がありました。ベジャール作品の特徴として音楽と動きが一体化されている、目で見る音楽という感があります。より視覚的に表現されているのが本作だと思います」と観客にその魅力を語る上野。
最後に、自身トップダンサーであり続ける秘訣を聞かれると、「踊ることが大好きで、お客さんに喜んで頂くことが幸せで、ただそれだけ、シンプルにそれだけをやってきました。ただ主役としてトップに立ち続けることの大変さは毎日感じていて、いい意味でどんどん変わっていく存在でありたいと思います。またどの世界で生きていても大変なことはあると思うので、好きだということが何よりも力になると思っています。本作から感じたこともその「愛」なんです」と力強くコメント。上野はじめとする一流のトップダンサーたちが奇跡のステージ実現にむけてどう向き合っていったのか、本作への期待が高まるトークイベントとなった。