2016年東京国際映画祭スプラッシュ部門で上映され、その後フランス・ヴズール国際アジア映画祭では、NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)含む3冠を達成、ドイツ・ニッポンコネクションほか海外映画祭でも高い評価を得てきた春本雄二郎監督 『かぞくへ』が2018年2月ユーロスペースにて公開されることが決定した。
家族を知らない男が、つかみかけた幸せを前に、親友と婚約者の間で揺れる――
日本の片隅に生きる若者たちの息遣いを骨太に描き出した人間ドラマ
ケン・ローチ、アトム・エゴヤン、ヤン・イクチュンといった重厚な人間ドラマの巨匠たちに続く才能が、日本映画界に出現した。
未来を共に生きる女性か、過去を共有してきた親友をとるのか、人生の岐路に立たされた男が東京で見た深い孤独。自分が持ちえなかった家族のぬくもりを渇望し、愛を求め、後悔を抱えながら、それでも生きていく――リアリティにこだわった演出で儚くも強い人間たちの息遣いを描き出した。
主人公・旭を演じた松浦の実話を基に、監督の春本雄二郎がオリジナル脚本を書き上げた。春本は、大学卒業後、松竹京都撮影所の演出部となり、井上昭、石原興らに師事。『鬼平犯科帳』『必殺仕事人2009』など時代劇を多数経験。2010年からはフリーの演出部として、様々な映画やドラマに携わってきており、本作が初監督作品となる。
その骨太な演出に確かな演技力で応えた松浦慎一郎、梅田誠弘、遠藤祐美ら俳優陣。主演の松浦は、俳優以外の活動としても2010年ボクシング界に貢献活躍したトレーナーに送られるエディ・タウンゼント賞を受賞、映画『百円の恋』(武正晴監督)で出演の他ボクシング指導にもあたった経験の持ち主。本作においてもボクシングトレーナーを生業としながら婚約者との結婚を目前に控える主人公・旭を熱演しているが、脚本執筆にあたっては春本監督が松浦の日常を細かく取材し、二人三脚でキャラクターを作り上げていった。今の日本で生きるには不器用すぎる人物たちが織り成す物語は、容赦なく観る者の胸に迫ってくる。