北野 武監督18作目となる最新作『アウトレイジ 最終章』が10月7日(土)より全国公開となる。『アウトレイジ』シリーズは、北野監督が初めて手掛けたシリーズプロジェクトで、裏社会の男たちの抗争を描いた究極のバイオレンス・エンターテインメント。2010年に『アウトレイジ』、2012年に『アウトレイジ ビヨンド』が公開され、シリーズ累計興収22億円超を記録した超人気シリーズ。そんな『アウトレイジ』シリーズが、ついに前作から5年の月日を経て最終章を迎える。第74回ベネチア国際映画祭にて、映画祭を締めくくる<クロージング作品>として本作の世界最速上映が実施された。上映前後には<記者会見>も行われた。
北野監督とベネチア国際映画祭の関わりは深く、これまでに第54回ベネチア国際映画祭にて『HANA-BI』が最高賞である金獅子賞、第60回ベネチア国際映画祭にて『座頭市』が監督賞にあたる銀獅子賞を受賞している。また『アウトレイジ』シリーズとしては、第1作目『アウトレイジ』が第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて上映、第2作目『アウトレイジ ビヨンド』が第69回ベネチア国際映画祭コンペティション部門にて上映されており、3部作全てが世界三大映画祭にて上映される快挙となった。
約150ものマスコミ媒体が駆けつけ、上映前に行われた公式記者会見には、北野武監督と森昌行プロデューサーが登壇。はじめに、本作で表現したようなちょっと時代遅れのヤクザを語る映画、そしてバイオレンス表現の変遷について質問が及ぶと監督は、「実は拳銃と一方的な暴力を除けば、現代社会の普通の企業の構造にかなり似ていて、私が演じた大友というヤクザも、古いタイプのサラリーマンであって、今の世の中では犠牲になる、というような話に言い換えることも出来ます。エンターテインメントとしてのバイオレンス映画として考えると、古いヤクザの抗争を描くのは面白いなと思います」と述べ、続けて「『アウトレイジ ビヨンド』という2番目の映画の脚本を書いた時に、3本で絶対終わるというような脚本を同時に書いていったんです」と本作の制作秘話を披露した。また、今回で9回目の作品上映と、関わりが深いベネチア国際映画祭について、「ダメな監督と言われたり、体を壊したこともあり、日本のエンターテインメントでは“もう終わった人”というような記事を書かれたり噂もあったり、一番自分のキャリアの中で落ち込んでいた時代があった。でもその後、ベネチア国際映画祭で立派な賞をいただいたことで、一気にエンターテイナーとしての地位に戻ることができた。自分のキャリアの中では、ベネチアは絶対に欠かせない自分の芸能生活の1つのエポック、事件で、いつも感謝しています」と、感慨深げに記者たちに向けて語った。
その後レッドカーペットでは、映画祭最終日の上映にも関わらず、異例の数のお客さんが会場に詰めかけ、大熱狂で迎え入れられた監督は、自らファンの元へ駆けより、写真撮影やサインに応じ、ベネチアのファンとの交流を楽しんだ。
そして、待望の本作の世界最速上映となったクロージング上映後には、2階席に座る監督へ向けて大喝采のスタンディングオベーションが送られ、監督も立ち上がり笑顔で手を振って応えた。鳴り止まない拍手と歓声は、監督が立ち去った後も数分間に渡って続き、大盛況でワールドプレミアを終えた。
また、上映後に行われた記者会見では、「やっぱり映画って初公開するっていうのはどこの映画祭でも緊張する」と、本作の初上映の感想を述べた監督。ベネチアでの上映について、「(監督の)ファンクラブがあって、顔見知りがいたり、そういう安心もあって、ありがたいけどプレッシャーにもなっている。自分の中では賞をもらったのがここベネチアでもあるし、この映画祭はちょっと違った意味はある」と、語った。前日には約60人の海外メディア記者を相手に受けたという取材を「かなりみんな好意的なのでほっとした」と振り返り、「映画祭に呼ばれるくらいの価値はあるんじゃないかなと自負している」と、ベネチアでの上映を終え、遂に迎える「アウトレイジ」シリーズ最終章の日本公開に向け、力強い言葉を投げかけた。