『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』ジャンフランコ・ロージ監督 記者会見

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』ジャンフランコ・ロージ監督 記者会見
提供:シネマクエスト

日程:1月19日
場所:イタリア文化会館
登壇者:ジャンフランコ・ロージ

2016 年ベルリン国際映画祭金熊賞受賞を受賞し、本年度アカデミー賞ドキュメンタリー賞ショートリストに選出された『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(2/11 渋谷 Bunkamura ル・シネマほかにて公開)のジャンフランコ・ロージ監督が来日し記者会見が行われた。

――どのような出会いからこの作品は生まれたのでしょうか?

ランペデューサ島との出会いから生まれました。飢餓や飢饉が原因でアフリカから逃げてくる難民移民の玄関口です。ここ数年で多くの方が逃げてきました。そして、約 27,000 人がその途中の海で命を落としました。大きかったのはバルトロ医師との出会いです。以前は難民の方が来た場合、そのまま陸に上陸していたのですが、4 年ほど前から海上で保護され夜のうちに島内のセンターに送られ、その後シチリアに送られます。なので、島民は彼らを目にすることもほぼありません。そのふたつを有機的につなげるがバルトロ医師でした。その図式はヨーロッパのメタファーのようだと思いました。近いのにコミュニケーションがとれないのです。

――前作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』もそうでしたが、劇映画のような瞬間があります。カメラワークをどのようにしているのでしょうか。

自分はドキュメンタリー作家で、脚本は書きません。そんな自分が映画作りで最も重要だと思うのは時間です。今回もランペデューサ島に 1 年半滞在しました。映画的言語を用いて映画を撮ることで現実が浮き彫りになるのです。どんな監督にも撮れない瞬間をとらえたい、そう思って映画を撮っています。ドキュメンタリーとフィクションで区別をしたくないのです。前作はヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門、本作はベルリン国際映画祭ののコンペティション部門に出品されました。どちらもフィクション作品のための部門のようですが、そこでフィクションと変わらず扱われ、どちらの映画祭でも最高賞を獲得することができました。ドキュメンタリーとフィクションの区別をつけたくないと思っている自分の作品が選ばれたことは本当にとても嬉しかったです。

――日本は難民に不寛容です。この国で公開する意義についてどう思われますか?

どの国でも公開されることは意義深いです。移民を受け入れるかどうか、政策を変える国もあります。自分の映画が歴史を変えられるとは思いません。ですが、知るきっかけにはなると思います。この映画は 64 ヶ国で公開が決まっています。この映画は答えよりも質問を生む映画だと思います。観客が劇場を後にしながら自分に何ができるか、考えてくれたら嬉しいですね。映画の冒頭で「what’s your position?」と海岸警備隊が言うシーンがあります。もちろん、船の位置を確認しているわけですが、あのシーンはメタファーです。これは観客に問うているのです。「あなたのポジションはどこなのか」と。日本で上映する意義はとても大きい。しかし、それはどの国でも同じことです。日本はとても豊かな国です。人口が 1 万人増えても問題ないのではないか、それくらい受け入れるのは当然ではないかと思います。日本の難民受け入れ数を聞いて驚きました。しかし、それは日本に限りません。オバマ大統領が去年言った、「壁を作るには世界は小さすぎる。それを作れば監獄と同じになってしまう」、これは大切な言葉です。この人数の人間が暮らすためには世界を区切ってはいけないのです。

――メリル・ストリープさんが映画を応援しているそうですね。

ベルリン映画祭の審査委員長だった彼女は初めて映画を見たときから、映画を信じてずっとサポートしてくれています。いま、アカデミー賞のキャンペーンを行っていますが、そこでも協力してくれています。こんな風に応援してくれる人は素晴らしい贈り物です。心強く思っています。ベルリン映画祭で彼女は言いました。「触れている問題のために賞を与えるのではない。物語の資質を評価してこの賞を渡すのだ」と。本当にうれしかったです。

最終更新日
2017-01-20 08:00:54
提供
シネマクエスト(引用元

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