世紀末のウィーン美術史に燦然と輝く芸術家、エゴン・シーレの愛の物語『エゴン・シーレ 死と乙女』(原題:EGON SCHIELE – DEATH AND THE MAIDEN)が2017年1月28日(土)に公開される。「エゴン・シーレ 死と乙女」を観た占星術家の鏡リュウジに作品へのコメントを依頼したところ、コメントの他に「エゴン・シーレが占星術的に見てとても興味深い人物」だということを教えてもらい、ホロスコープ(出生時の天体の位置から運命などを読み取る)をみたようだ。
シーレは1890年に生まれである。占星術家ならこの年代を目にするとピンとくるものがある。この年、太陽系の彼方の天体である海王星と冥王星が接近しているのである。これは実におよそ492年に一度のこと。よきにつけ悪しきにつけ、大きな社会変化の種子が巻かれる年であるとされ、あのヒトラーもこの星の会合のもとで生まれている。
もっともこの世代生まれはすべからくこの星の配置をホロスコープに持っている。いわばこの人たちはすべて社会の価値観の大きな変化を何らかのかたちで深く体験することになると考えられるわけだが、シーレの場合にはこの海王星と冥王星の合に水星、火星までもがコンタクトしている。
海王星は、この世界を超えた、理想的な美の世界を象徴する。一方で冥王星は死が象徴するような、極限の状況を表している。ここに永遠の少年の神である水星(ヘルメス)と情熱の火星が加わっているのである。
シーレの求めた美は、この物質世界には存在しなかったのかもしれない。強迫的ともいえる少女たちへの性への憧憬は、本来、この世界では実現不可能な美への、形を変えた表れだったのかもしれない。
シーレが28歳でこの世を去ったとき、進行した太陽は美の星である金星に接近。シーレは死の中でこそ、理想の美の世界に帰還したかのように見えるのである。」