日時:1月7日(土)
場所:新宿武蔵野館 SCREEN1
登壇者:鈴木真理選手(宇都宮ブリッツェン)、絹代(サイクルライフナビゲーター)
香港アクションの申し子と言われるダンテ・ダム監督が、台湾・韓国・中国から人気実力派俳優を招集し、満を持して送り出した本格プロ・ロードレース映画『疾風スプリンター』が7日に全国公開した。公開を記念し、現役プロ・ロードレーサーとして活躍する宇都宮ブリッツェンの鈴木真理選手と、サイクルライフナビゲーターの絹代が登壇して初日トークイベントが実施された。
会場まで自身の自転車で自走してきたという鈴木選手は、自転車とともに登壇。「MERIDAの自転車にママチャリ用のペダルをつけて走ってきました(笑)」と話すと、サイクリストも多かった客席からは身を乗り出して見る人もいるほど熱気に溢れた。
映画について「自転車映画と聞いて、最初はまったく期待していなかったんですが、知らず知らずにのめり込み、昔の自分と置き換えて観ていました。プロ選手の気持ちに共感しました。」と語った。「映画の中では感情むき出しの熱い男たちが登場しますが、真理選手は大人で感情を表に出すタイプではないですよね?」との絹代からの質問に、「20代の頃は感情むき出しで、エースの座を死守したいと思っていました。勝てば勝つほど給料もあがるし、優遇される。当時は目も心も鬼の時代でした(笑)」と明かした。迫力のレースが見所のひとつでもある本作について「実際のロードレースで体当たりをして落車させるなどはないですが、それくらいレースは激しいものであるし、相手を掴んで転ばせたいと思うくらいレースではどん欲に優勝したいってなります。実際に僕もエースとしてやっていた時は、相手に“10万払うから勝たせてくれ”と思うくらいどうしても優勝したいって気持ちを持っていました(笑)」と、プロのロードレーサーにとって勝つことへの重圧や重要さについて話した。
本作ではドーピングについても描かれている。「実際にはやっていないですが、金を払ってでも勝ちたいというのも、ズルをするという点ではある意味ドーピング。選手として感情移入するシーンであり、もし周りがやっていたら自分もやっちゃったのかな?と思うくらい。文化の違いですが、日本では幸いドーピングという風習が無いので、僕がエース時代は全くそういうことを考えたこともなかったし、相手がやっているとも思っていなかった。不幸中の幸いだったのかもしれない。この映画は、人間の欲が上手に描かれているなと思いました。」と真剣な眼差して語った。
また現在、脚の血栓症という病気で悩んでいる鈴木選手は、「選手を辞めたくないけど辞めたい…という気持ちで葛藤しているんですが、女性サイクリストのシーヤオの気持ちに置き換えて観てしまって、落車して走れなくなったシーンでは涙しました。そこからの彼女の切り替えもスゴいなって、まさに不屈の精神ですよ。」と、映画に登場する選手たちそれぞれに共感しながら観たことを熱く話した。
最後に、「高い自転車じゃなくてもいいんです。ママチャリでもちょっと走りに出たら気持ち良いなって思ってもらえると思います。ぜひ天気の良い日に自転車に乗ってみてください!」と締めくくった。