第68回カンヌ国際映画祭監督週間で上映され絶賛された、名匠フィリップ・ガレル監督の最新作『パリ、恋人たちの影』が2017年1月21日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開となる。
夫・ピエールの才能を信じ、二人三脚でドキュメンタリー映画を制作する妻・マノン。映画制作に行き詰まりを感じていたある日、ピエールは若い研修員のエリザベットと偶然出会い、恋に落ちる。あるときエリザベットは、予期せずピエールの妻マノンが浮気相手と会っているところを目撃し、彼に告げるが――。 思い描いていた未来とは少し違う現在に、満たされない想いを抱え、愛されたいと彷徨う男と女たち。愛の痛みだけでなく、愛する喜びがモノクロームの映像の中に軽やかに浮かびあがる。
そんな本作の映像に見事マッチした、儚くも美しい映画音楽を手掛けたのはフレンチロックの大御所ジャン=ルイ・オベール。彼とガレルとの出会い、そしてその音楽の魅力に迫る。
■オベールは、あのジミー・ペイジも絶賛したロックバンドのフロントマン!
70年代後半に盛り上がっていた音楽といえばイギリスのロックバンド、ジョイ・ディヴィジョン。その後、スミスやニューオーダーなどパンク・ロックからニュー・ウェイヴへと時代が変化している最中、フランスではテレフォンというバンドが一世を風靡していた。あのギターの神様、ジミー・ペイジも彼らを絶賛。ジャン=ルイ・オベールはテレフォンのギター・ボーカルを担当。ポップな音楽性と、若い頃にはミック・ジャガー、歳を重ねてからはイギー・ポップとも比較される彼の端正なルックスも相まってか、フランスでは知らない人のないロックバンドに成長した。しかしその後、惜しまれつつテレフォンは86年に解散。それでもオベールの人気は止まらず、リリースしたソロアルバムは、のきなみヒットを記録した。
■オベールとガレルの出会いは一本のMVだった!
オベールと、フィリップ・ガレル監督は『ジェラシー』に続き、最新作『パリ、恋人たちの影』が二度目のタッグ。それ以前のガレルの音楽と言えば、元ヴェルヴェットアンダーグラウンドのジョン・ケイルや(『愛の誕生』『夜風の匂い』)、セルジュ・ゲンズブールの作品でおなじみのジャン=クロード・ヴァニエ(『白と黒の恋人たち』『恋人たちの失われた革命』)であった。
ソロ活動をする傍ら、オベールは英国アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『ずっとあなたを愛してる』(08/フィリップ・ロデール監督)で映画音楽を担当。そして、オベールが自身の音楽のミュージックビデオの製作をガレルに頼んだことがきっかけで『ジェラシー』の映画音楽を手掛けることに。ガレルはオベールの音楽を聴き、彼に映画音楽を担当して欲しいと強く感じた。
「ジャン=ルイ・オベールとはとても気が合いました。同じ世代に属しているのが大きいのですが、彼といると同じ宇宙に属しているという感覚をおぼえました。」とガレルが語るように音楽家と映画監督という才能を持った二人が、互いを信頼しあって作り上げた本作に注目だ。また、彼らの初めてのタッグとなった『ジェラシー』は、同時開催される特集上映にてみることができる。