【東京国際映画祭】映画監督 細田守の世界/『サマーウォーズ』上映後トークショー

【東京国際映画祭】映画監督 細田守の世界/『サマーウォーズ』上映後トークショー
提供:シネマクエスト

東京・六本木で10月25日から開催されている第29回東京国際映画祭。この映画祭の中で、「映画監督 細田守の世界」と題した特集上映が行われています。10月28日に行われた2009年の細田監督作品『サマーウォーズ』の上映後、細田守監督自身が登場してのトークショーが行われました。
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登壇者:細田守(監督)/氷川竜介(本特集プログラミング・アドバイザー/アニメ特撮研究家)

■氷川:7年前の作品ですが、現代とはやはりずいぶん隔たりがありますね。この映画にはiPhone3が登場していますが、日本で初めてiPhoneを画面に出した作品じゃないでしょうか。細田監督の作品は、いつも最先端のIT機器が出てきますね。これには何か理由が?

■細田監督:そうですね、僕はその時代時代の一番新しいものをあえて積極的に取り入れようとしています。映画って後に残るものだから、普通は時代を感じさせるものを出さないという方法もあるんですよね。特に今は、携帯電話の機種に時代性がすごく出てしまうんです。だからこそ、そういう時代のわかるものをあえて入れるということを積極的にやっているんです。

■氷川:逆に、陳腐化していないですよね。ガラケー全盛で、iPhoneが入ってきた時代、その時代の最先端だという宣言になっているように思います。

■細田監督:時代性をあいまいにすると、世界観がよくわからなくなるんじゃないかという思いがあるんです。映画って、現代物であっても時代劇であっても、結局描いているのは“現在”だと思うんです。だからこそ、結果的にその時代性を刻印したほうがいさぎよいんじゃないかと考えています。最新のものを描かないと、その時代性のようなものが抜け落ちて行ってしまうのではないかなと。

■氷川:作品を観ると、二つ折りの携帯が全盛で、懐かしさを感じる部分もありますね。

■細田監督:現在は、携帯電話に代表されるように、たった2~3年前のことをすごく古く感じることがありますよね。更新速度が早くて、前がどうだったかというのをすぐに忘れてしまいます。時代感が捉えづらくなっているので、そういった時代感のズレを切り口にして作品を描くと面白いんじゃないかと思っています。

■氷川:『サマーウォーズ』はSNSが流行し始めていた時代に、その仮想空間でのネットワークという概念を描いていますよね。当時はやはりすごい最先端だったと思うんですが、監督自身がSNSで感銘を受けた、といったことがあるんですか?

■細田監督:実は、僕はSNSをあまりやっていない人間なんです。今でもLINEアカウントすら持っていないですから。でも、SNSを使いこなしてはいないからこそ、客観的にその状況を観られるというのもあると思いますよ。それにどっぷり浸かると、逆に見えなくなるものがあるかもしれないですよね。

■氷川:SNSもそうですけど、『サマーウォーズ』って、やはり人のネットワークの話なんですよね。親戚付き合いを代表するリアルなネットワークと、逆に仮想空間OZのインターネットを通じたネットワークと。

■細田監督:この作品に登場する陣内家のモデルは、今大河ドラマをやっている真田家がモデルになっているんですよね。戦国時代から連綿と続く武田家臣団のネットワークと、今現在のインターネットを通じたネットワークと。どちらがいい悪いという話ではなく、一見まったく違うものなんだけれど、本質には同じなんじゃないかということを提示しているんだと思います。

文:松村知恵美
画像:(C)2016 TIFF

最終更新日
2016-11-02 11:56:36
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