映画『淵に立つ』の初日舞台挨拶が8日、都内の劇場で行われ浅野忠信、筒井真理子、古舘寛治、太賀ら出演者と深田晃司監督が登壇した。イベントでの主なコメントは次の通り。
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浅野:僕はこの作品に出演して一番ありがたいと思ったことは、深田監督との出会いでした。
どの映画の現場でも色々なことを学ぶのですが、やはり相変わらず監督の力はすごいものだと思っています。深田監督は、この映画の企画をずっと温めて取り組んできて、僕の想像以上に作品に対する考え方に奥行きがあるのを感じました。その力があまりに強かったので、一緒になって素晴らしい映画が作れたんだなと実感しています。
どの作品でも妥協なく取り組んでいますが、今回は特にスタッフ一丸となって、毎日のように、どの人からもすごい意気込みを感じて、それに自分も触発されて、新しいアイデアが出たりイメージが膨らんだりしていました。そうした動きがどんどん大きくなって、最終的にカンヌで良い評価を頂くことに繋がったのかなと思っています。
筒井:(「今年の主演女優賞の本命では?」と言われて)なんだかこそばゆくて……。試写会などでご覧になった方にも、時々お褒めの言葉を頂いて「今まで筒井さんのこと、ノーマークでした」と言われるのですが、『待てよ、私の30年間のキャリアは何だったんだろう……?』と思いつつ(笑)ありがたく受け止めています。これもひとえに、信頼する深田監督と共演者の皆さんのおかげです。
古舘:僕は今までは変わった役、攻撃的な役が多かったのですが、今回は普通の人で受け身の演技という点で、新境地だったと思います。「普通さ」にチャレンジするのは新鮮で、とても楽しく演じました。
太賀:そうそうたる素晴らしい先輩と芝居をするというのは、相当なプレッシャーで。悩んでいた時に監督に相談したら「脚本を信じてください」という一言を頂いて、そのシンブル言葉が演じる上で明確なベクトルになって、素晴らしい脚本と監督に導かれて現場に臨みました。共演者からのアドバイスは……特になかったですね(笑)。けれども皆さんの芝居が本当に素晴らしくて、僕は先輩方の胸をどっぷり借りて、集中して取り組むことができました。
篠川桃音:最初は緊張して不安でしたが、2人(古舘と筒井)ともとても話しやすくて、最後は本当の家族みたいになりました。
真広佳奈:今回は初めての映画出演で、誠意を持って挑もうと思いました。監督とも何度も話し合ってアドバイスを頂き、とても貴重な経験になりました。『淵に立つ』がデビュー作品になることをとても嬉しく思っています。すごく素敵な作品なので、早く観てほしいなと思います。
深田監督:映画を作る時はいつも、まず自分が面白いものは何だろう? という所からスタートするので、どこの国の人に観てもらおうというのは全然考えていないのですが、『淵に立つ』でカンヌやトロント、世界のいろいろな国に行って思うのは、日本で生まれて育ってきたという立ち位置をしっかり持っている作品が海外に行けるのだなと。国際人のふりをしてやるよりは、日本人の視点をきちんと持っていることがすごく重要だなと思いました。
『淵に立つ』はカンヌで上映した後に記者からの質問や感想を聞いていて、ちゃんとグローバルな日本映画になれたんだな、ということを感じています。まずは日本の皆さんに、観ていただけることがとても嬉しいです。