本年度アカデミー賞脚本賞・作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』はカトリック教会の神父による児童への性的虐待事件を追ったボストン・グローブ紙の新聞記者たちの姿を描いた真実の物語。極上のアンサンブル演技が話題となった同作の中心となる「スポットライト」チームの4人の新聞記者を演じるマイケル・キートン、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスという豪華メンバーの中に見慣れない顔が一人いる(写真一番右)。彼の名はブライアン・ダーシー・ジェームズ。髭が印象的なデータ分析担当のマット・キャロルを演じている。
1968年生まれのジェームズはブロードウェイの実力派スター。昨年の第69回トニー賞に10部門ノミネートされたコメディ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』では主演を務め、シュレックを演じた『シュレック・ザ・ミュージカル』『成功の甘き香り』の3作品でトニー賞にノミネートされている。テレビドラマでは『SMASH/スマッシュ』などに出演し映画にも出演しているが舞台ほどの代表作はなく、今回の『スポットライト 世紀のスクープ』が初の大役となった。
ジェームズは本作への出演をオーディションで勝ちとった。オーディションでは2シーンだけを監督の前で演じ、2週間後に電話をもらって翌日から撮影に参加したという。
準備期間は短かったが「(モデルとなった)マットとは実際に会ってじっくり話したよ。記者として人生の一大事をどう経験したのか彼自身の口から語ってもらった。彼の半生についても聞いてどんな価値観を持った人物かを知ることができたよ」と役作りについて語った。
「この映画は情報が盛りだくさんで細部まで丁寧に描かれている。トム・マッカーシー監督は真実を伝えることだけでなく登場人物の感情の起伏も大事にしていた。事実を並べるだけじゃつまらないからね。登場人物の心の揺れ動きを見ることができるんだ」と今作の魅力を語り、作品を通じて自身が感じたことについては「真実を報道することや言うべきことを言う姿勢は重要だ。権力への批判、人々が気づいていないこと、誰もが目を背けてしまうような事実、それらを扱うことでジャーナリズムは世界に貢献できる。今までは署名入りの記事を読んでもただそれだけのことだった。でも今は分かる。署名入りの記事は記者の大変な犠牲の上に成り立ってるんだ」と熱く語っている。
ジェームズはマッカーシー監督に「あなたは私の人生を変えた。だって4本のテーブルの脚の1本という大役を僕に与えてくれたんだから」と感謝を伝えたという。
待機作にはケヴィン・スペイシー、ニコラス・ホルトと共演する『Rebel in the Rye』などがある。映画界でも“スポットライト”を浴びたブロードウェイスターの今後の活躍に注目だ。