「とにかく難しくて、痛ましくて、感覚が麻痺するような経験だった」。『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』アンドリュー・ガーフィールド公式インタビュー

「とにかく難しくて、痛ましくて、感覚が麻痺するような経験だった」。『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』アンドリュー・ガーフィールド公式インタビュー
提供:シネマクエスト

明日30日に初日を迎える映画『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』から、主演のアンドリュー・ガーフィールドのオフィシャルインタビューが到着した。

今作で描かれるのはリーマン・ショック後のアメリカ・フロリダ州を舞台に、金、欲望、モラルの間で人生を狂わせていく男たち。ガーフィールドは、長年暮らしてきた家から強制退去させられ、後に自分たちを追い出した不動産ブローカーの儲け話に手を染めていくシングルファーザー、デニス・ナッシュを演じている。
____________________________________________________________

この映画に最も繋がりを感じたのは何でしたか?

西欧社会のごく普通の人々の物語なんだ。罠から抜け出せずに、がんじがらめにされ続けている人々に真のコミュニティを作ることを阻止する何物かについての映画だ。そしてもちろん、お金にまつわる話でもある。一旦、人として敬うべき価値観よりもドル記号に重きを置き始めると、トラブルが起き、全員が敵に思えてきて、コミュニティのある社会よりも競争社会にハマってしまう。このあたりのテーマが、この映画の脚本の冒頭わずか30ページほどで僕に大きな衝撃を感じさせてくれたものだったね。

映画の冒頭、ナッシュはどんな状況にいるのでしょうか?

主人公は絶望のどん底にいて、奇跡を必要としている状況にある。結局、彼が必要としているような奇跡は起きず、逆に非常に胡散臭い人物を通して救いの道が提示される。彼はとにかく、確かに人生の危機に直面している。価値のない男だと自分を責めてくる社会の中で、家族の家と家族自体、人間としての義や誠実さ、人間らしさをなんとか守ろうとあらゆる手段を尽くしているんだ。

強制退去シーンの撮影について教えてください。

そのシーンこそ、この映画を引き受けたい、やらざるを得ないと思わせてくれた強烈なシーンだった。そのシーンを完璧にこなすことが、全員にとって最重要課題だということは分かっていた。映画全体としていえば、とにかく難しくて、痛ましくて、なんというか、感覚が麻痺するような経験だった。まるで、決して降りることができない列車に飛び乗らなければならないような感覚だったね。地獄に向かう列車にね。誰もが共感できるような経験でもあると思うんだ。誰もが、生きていくうちに一度は喪失を味わう経験をするものだと思う。それに、不当に扱われ、人間らしさや願いを無視された経験も多くの人が味わっているものだと思う。

この映画のためにリサーチしたことは?

アメリカを襲った住宅危機を日の目にさらした作品なんだ。特に、フロリダ州での状況は悪い。この物語を語る上で欠かせない重要な人物の多くや当事者と実際会って話す機会に恵まれて、実体験を持ついくつかの家族にも会うことができた。僕個人にとっては、感情の問題が最重要だったんだ。数週間かけて、12家族ぐらいと面会させてもらったよ。そのうち何度も会って話した家族もいたね。僕はとにかく彼ら家族の話を聞くことに徹した。興味深かったのは、彼ら家族の情熱…。情熱という言い方は間違っているね…。情熱ではなく、彼ら家族が自身の物語を語る必要性や切迫感に圧倒された。

ナッシュがする「悪魔の取引」について教えてください。

いわゆる「悪魔との取引」は名声のためでも、富のためでも、甘い水に引き付けられるような強力な誘惑のせいでもない。ただ、物語が展開するうちに、「これはいい感じだ、もしかしたらこのまま上までどんどん登り詰めて、どんどん高くのし上がって、ゆくゆくは現状のシステムを克服して自分がシステムの一部となれるような日が来るかもしれない。そして、象牙の塔のてっぺんに立つ一人となって自分の仲間を助けることができるかもしれない、かつての自分と同じような立場に立つ仲間たちを」という思いが芽生えてくることも確かだね。

とにかく、「悪魔との取引」は実際に悪魔と取り引きしているようには彼には感じられなかった。逆に、生き残りと愛情を賭けた闘いのように感じていたんだと思う。デニスにとっては、まるで自己犠牲のような感覚だったんじゃないかな。彼としては、自分は何でもする、大嫌いな奴の下で働くことさえ厭わない、それで息子と母親が良い人生を送ることができるなら何だってする用意はある、という思いだったんじゃないかと思う。単に生き残るためだけじゃなくてね。

映画の中に存在する2つの世界について教えてください。

映画はまるで2つの世界が並行して流れている感じで、僕はいつも家族の世界に戻りたくて仕方なかった。リック・カーバー(ナッシュ一家を強制退去に追い込む不動産ブローカー)との世界はとにかく痛ましいばかりだった。毒づいていて、邪悪で、病的な世界だった。ボビー・ブコウスキーの撮影の仕方も、リックとの場面はどれも冷たい感じがする映像だった。セットデザインでも、家族が一時避難するモーテルを、セットデザイナーのアレックス・ディジェルランドはとにかく素晴らしく仕上げてくれた。彼はモーテルの部屋を家族の空間に仕立て上げてくれたんだ。多くの写真資料などを通して、家族のいる空間を見事に作り上げてくれた。ボビーも、モーテルでは家族的な温かなショットや温かなライティングを意識していた。一方で、成功が臭う世界では機械的な映像を撮っていた。成功というものはこれほどまでに人を骨抜きに、魂を奪うものだという表現が込められていたんだ。

最終更新日
2016-01-29 18:16:26
提供
シネマクエスト(引用元

広告を非表示にするには