映画『の・ようなもの のようなもの』(公開中)の公開を記念して、故・森田芳光監督の劇場デビュー作となった『の・ようなもの』が期間限定で上映され、併せて23日に開催されたトークイベントに秋吉久美子、当時志ん魚としてデビューした伊藤克信、『の・ようなもの のようなもの』の杉山泰一監督が出席した。
1981年版『の・ようなもの』は1月29日まで東京・角川シネマ新宿で上映中。
トークイベント中の主なやり取りは次の通り。
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ひと言挨拶をお願いします。
■秋吉:(公開当時の)35年前とは、今観ると全然違う新しい気持ちで観ることができました。あの時は全然気付かなかったけど、観るすと本当に伊藤くんはうまかったんだね。
■伊藤:人間ってのは35年経つとこんなに変わるんです。秋吉さんは相変わらず怖い人ですね(笑)。
■杉山監督:僕は助監督でカチンコを打っていましたが、つい昨日のように覚えているので今日はなんでも聞いてください。
撮影時の印象、エピソードを教えてください。
■秋吉:『の・ようなもの』のスタッフは、いわゆるアンダーグラウンド系じゃなくてとても品の良い人たちでした。森田(芳光)さんとは、そんなに細かなやりとりはしなかったけど、1回だけ呼び出されて「(秋吉さんは)監督への尊敬のまなざしが欠けています。このままでは女子高生役の人たちからもなめられてしまうから変えてください!」と言われました。いちいち考えたり、カメラ位置で悩んだり、(当時は)何なんだ、と思っていたんだけど、観直すと世界観がジグソーパズルみたいで、青春の感受性に溢れて、輝きや屈託のなさ、それゆえの残酷さが描かれていて、森田さんも伊藤くんも天才だったんだね(笑)!
森田さんは、(フランシス・フォード・)コッポラで、伊藤くんはアル・パチーノ。もう『ゴッドファーザー』パート1、パート2みたいなものじゃない?!
■伊藤:当時は、もう無我夢中でしたから。秋吉さんは大スターで怖かったし。でも今思うと俺、良い役だったよね!
■秋吉:嘘だよ、最初から伊藤くん、図々しかったよ(笑)!
■杉山監督:ソープ嬢のエリザベス役は森田さんになんて口説かれて演じることになったんですか?
■秋吉:口説かれてないです。脚本を見て単純に面白いと思ったから出ただけ。ソープ嬢をあんな風に描いているものがそれまでなかったと思うし。影を抱えているような事件的な女性ではなくて彼女含め青春感があった。
『の・ようなもの のようなもの』を観ての感想をお願いします。
■秋吉:人間の感受性が前に出ていて、そういう世界感が共通していた。志ん魚と志ん田(松山ケンイチ)の世代交代だよね。前作でエリザベスが志ん魚の前からそっと身を引いていくように、今度は志ん魚の番が来たんだって思いました。
もし10年前後でさらに次回作ができるとしたら、エリザベスは養老院の園長さんになって、そこに脳梗塞の志ん魚ちゃんが入院してくる! どうかしら!