
サン・セバスチャンのエリアス・ケレヘタ映画学校で学んだ新鋭・宇和川輝監督が、マドリード、サン・セバスチャン、岡山を横断して紡いだ追憶の物語「ユリシーズ」が、7月19日(土)よりポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。予告編(本作のプロデュースと撮影を担ったikoi filmsの関野佳介が制作)と著名人のコメント第2弾が到着した。
予告編制作にあたって 関野佳介(ikoi films/本作プロデューサー・撮影)
予告編では本編に登場する3つの異なる場所を行き来したり、飛び越えたりするような編集をしたいと考えていました。そのために『ユリシーズ』が全体として何を語るのか改めて探っていたところ、小川公代さんのコメントがヒントになりました。配給・宣伝の過程で、本編の制作に直接携わっていない方々とも関係の輪が広がり、そこで出会う新たなことばや解釈から作り手側が影響を受け、予告編などさらなる制作物を形作っていく。映画がこうした広がりを生む場所になっていることは、ikoi filmsとして目指したいひとつの姿であり、この点においても『ユリシーズ』は大切な1作目になりました。
〈著名人コメント第2弾〉
上映時間が73分とは到底信じられない。父なるものの不在と引き換えに、画面は静謐なうつくしさを呼吸し続ける。なんという不思議な旅の始まりだろう。
--野崎歓(フランス文学者)
父は宝物を探しに旅に出たという。「いつ帰ってくるの?もう千年も過ぎたよ」と息子は問う。その声に耳を澄ます。『ユリシーズ』は掬い取ろうとすれば壊れてしまう儚い世界の破片を拾い集め、小さな日常の時間の隙間に千年の普遍的な物語を紡ぎだそうとする驚くべき旅である。
--諏訪敦彦(映画監督)
旅がある。
英雄の特権だった、市民的な責務だった、民族的な使命だった、旅をやわらかに踏みこえていく、旅。
粛々とこなされる日常が、寄るべない移動が、国境を越え、言語を超え、旅の密度につかれた現代人に、旅の魂を再配置するのかもしれない。
--五所純子(作家、文筆家)
世界の三つの場所にいる旅人たちのそれぞれのからだが、それぞれの「フィールド=日常」を書きなおしていく。巻き込まれながら、美しさを知りたい眼を持ちながら、自分もいるその世界から、書きなおす。今まで政治や歴史が書いたかたまりを溶かして、それを根っこで吸収し、枝葉に変えゆくような、そんな『ユリシーズ』が次なる新たな映画群のはじまりの一つに思えて仕方ない。
--山﨑樹一郎(映画監督)
僕たちが帰る場所はいったいどこなんだろう?考えれば考えるほどそんな場所どこにもない感じがするけど、でも例えば『ユリシーズ』の、道端に腰掛けて風に吹かれたビニールのゴミを二人で見るときのささやかさの中にある気がする。他愛もなく心が通じ合ってしまうような時間に。
--五十嵐耕平(映画監督)
フロントガラスの雨を眺めながら、訪れたこともない異国の雨を思い出す。
不確かな記憶が緩やかに接続される時間が心地よく、永遠に続いて欲しいと思っていた。
--太田達成(映画監督)
©ikoi films 2024
製作・配給:ikoi films
新鋭・宇和川輝監督が国境を越えて紡ぐ現代の叙事詩「ユリシーズ」