提供:キネマ旬報
「ドライブ・マイ・カー」『ガンニバル』の脚本を手掛けたことで知られる大江崇允監督が、落合モトキ × あの のW主演で、リアルとバーチャルを交錯させて紡いだ迷宮ファンタジー「鯨の骨」が、今秋に渋谷シネクイントほかで全国公開。第27回プチョン国際ファンタスティック映画祭コンペティション部門への出品も決まった。
結婚間近だった恋人と破局した不眠症の間宮(落合モトキ)は、マッチングアプリで唯一返信をくれた女子高生と会う。ところが彼女は間宮のアパートで自殺してしまい、うろたえた間宮は山中に埋めようとするも、気づけば死体は消えていた。そして彼はAR(拡張現実)アプリ〈王様の耳はロバの耳〉(通称ミミ)の中で、死んだ女子高生と瓜二つの少女“明日香”(あの)を発見。明日香はミミを通じて再生できる動画を街中で投稿しており、それを求めて徘徊するファンたちにとってカリスマ的存在だった。明日香の痕跡を追ううちに、現実と幻想の境界が曖昧になっていく間宮。いったい明日香とは何者か、死んだ少女と同一人物か、本当に存在するのか--。
「桐島、部活やめるってよ」「素敵なダイナマイトスキャンダル」などで知られる落合モトキは、無気力とナイーブの狭間を漂いつつ、未知なるアプリ世界にはまり込んでいくサラリーマンの間宮を好演。そして唯一無二の個性で注目されるミュージシャン・あのは、孤独な人々を引き寄せる明日香役で捉えどころのないカリスマ性を放ち、時代の空気を体現する。
さらに、明日香に憧れて〈ミミ〉内で新たなカリスマを目指す凛役を横田真悠、間宮の恋人の由香理役を大西礼芳、明日香の熱狂的信者・しんさん役を宇野祥平が務める。
海底には“鯨の骨”の栄養を求めて群がる魚たちがいるという。本作の人々は、半バーチャル世界に潜って明日香を探す。彼女は救いをもたらす希望か、それとも現実から目を逸らし続けるための底なし沼か。大江崇允のシュールで挑戦的な仕掛けに翻弄されるはずだ。
〈コメント〉
大江崇允監督
「都会の夜は深海に似ている」
このフレーズが映画の発端であり、またその全てです。
深海では、海底に落下した鯨の骨に群がり、その栄養を吸って生きる小さな生物群集が存在しています。それらは鯨の骨の栄養を吸い尽くすと、やがて骨と一緒に消えてしまう儚い生物です。
そんな生物たちですが、どうやら薄っすらと発光しているそうなのです。
僕には深海の点在する光が、まるで空から見た都会の夜の灯りと重なりました。
僕が四角い水中眼鏡をかけて見ている世界、それがこの映画です。
一人でも多くの人にこの眼鏡を楽しんで頂けたら嬉しいです。
落合モトキ
大江監督とイメージを合わせながら撮影していましたが、完成した作品を観た時、自分の中には存在しないジャンルの映画でした。なので皆さんに観て頂いた後の感想が非常に楽しみな作品です。撮影中、印象に残ってるのはあのちゃんを追いかけるシーン。あのちゃんは信じられないくらい足が速くて久々に本気で走りました。でもそれが可愛らしく見えたり。是非劇場にお越し頂けると嬉しいです。宜しくお願いします!
あの
ただ無性に冷たくて息もうまく吸えないそんな時期に撮影し、撮影しながらまるで深海にいるような、何度も明日香が自分と重なっては濁って消えていく、そんな体験をしました。鯨の骨でしか味わえない何とも奇妙な浮遊感を皆様にも楽しんで頂きたいです。
「鯨の骨」
出演:落合モトキ、あの、横田真悠、大西礼芳、内村遥、松澤匠、猪股俊明、宇野祥平
監督:大江崇允 脚本:大江崇允、菊池開人 音楽:渡邊琢磨
プロデューサー:近藤多聞、片山武志 エグゼクティブプロデューサー:後藤哲 スーパーバイジングプロデューサー:久保田修 共同プロデューサー:田中美幸
撮影:米倉伸 照明:高井大樹 録音:阪口和 美術装飾:田中智子 編集:西山理彦 助監督:山下久義 制作担当:福島伸司 スタイリスト:神田百実 ヘアメイク:風間啓子 サウンドエディター:野村みき リレコーディングミキサー:大保達哉
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント 制作プロダクション:C&Iエンタテインメント 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2023『鯨の骨』製作委員会