俊英・二ノ宮隆太郎監督の商業デビュー作かつ光石研12年ぶりの映画単独主演作であり、人生のターニングポイントを迎えた中年男が新たな一歩を踏み出すまでを描く「逃げきれた夢」が、第76回カンヌ国際映画祭ACID部門に出品されることが決定。合わせて二ノ宮監督、光石研、選定委員のコメントが到着した。映画の日本公開は6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国の劇場にて。
ACID部門は、1993年に芸術的な作品を支援するために映画作家たちが創設した〈インディペンデント映画普及協会(ACID)〉が運営・作品選定を行い、毎年、先鋭的な9作品を紹介している。「逃げきれた夢」は約600の応募作から選ばれ、日本映画の同部門出品は昨年の「やまぶき」(山﨑樹一郎監督)に続く2本目となる。
〈コメント〉(敬称略)
二ノ宮隆太郎監督
福岡県北九州市の黒崎の街を、光石研さんと歩かせていただいたのがこの映画の始まりでした。
そこは光石研さんが生まれ育った街で、過ごされた時間への想いが、この映画に詰まっています。
北九州オールロケの作品です。撮影時には地元の皆様に本当に支えていただきました。
尊敬するキャスト、スタッフの皆さんとご一緒できましたこと、そして素晴らしい環境で上映できることに感謝しかないです。
光石研
カンヌ映画祭、ACID部門正式出品の一報を聞き、本当に嬉しい限りです!
この映画は、小さな町の小さな男の話です。
でも、例えばEUの小さな町の小さな男の話でもあるのです。
すなわち、グローバルな話です。
ヨーロッパの人々にも共感して頂けると思います。
カンヌでの上映、観て頂いた方々の反応が楽しみです。
そして、個人的には我が九州弁がカンヌに轟く快感、身震いします。
二ノ宮監督、良かったね!そして、ありがとう!
ACID部門 選定委員
非常に深みのある作品。トルストイの「イワン・イリッチの死」の登場人物や設定を現代に置き換えているようで、題材こそ新しくはないが、現代に生きる男が人生の意味に向き合う姿を描いている。それはまさに現実の狭間といえる。社会情勢が異なる19世紀と時は異なるが、すべてが繊細で、非常に一般的かつ重要な問題を表現している。(リナ・ツリモヴァ)
演出、そしてシーンの構築が素晴らしい。儚さを受け入れなければならないが、そこに飛び込むと、逸品が待っている。(ヴィケン・アルメニアン)
Story
北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平。ある日、元教え子の南が働く定食屋で、支払いをせず無言で立ち去ってしまう。記憶が薄れていく症状によって、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子との仲は冷え切り、一人娘の由真は父親よりスマホ相手の方が楽しそうだ。旧友の石田との時間も、ちっとも大切にしていない。「これから」のために、「これまで」を見つめ直していく周平だが……。
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ
配給:キノフィルムズ
︎ 俊英・二ノ宮隆太郎監督の商業デビュー作にして名優・光石研の12年ぶりの映画単独主演作。中年男が人生を見つめ直す「逃げきれた夢」