死んだ妻はある日、掃除機の姿で帰ってきた──。タイの新鋭ラッチャプーム・ブンバンチャーチョークの長編デビュー作となる「ユースフル・ゴースト」が、7月10日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。ティザービジュアルと特報映像が到着した。
粉じん公害が深刻化するバンコク。愛妻ナットを呼吸器疾患で亡くしたマーチは、悲嘆に暮れていた。そんな中でナットは、魂を掃除機に宿らせて舞い戻り、夫と再び愛を確かめ合う。その頃マーチの家族が経営する工場では、死亡した従業員の霊が機械に取り憑き操業停止に追い込まれていた。身内にも社会にも拒絶されたナットは、工場の除霊に協力することで、夫への愛および自身の存在意義を証明しようとするが……。
タイで有名な怪談「メー・ナーク・プラカノーン」(死後も現世にとどまり、夫と禁断の愛を深めた女性メー・ナークにまつわる物語)に着想を得たという本作。ナット役を「愛しのゴースト」でメー・ナークに扮したダビカ・ホーンが務め、『運命のふたり』のウィサルット・ヒンマラット、「デュー あの時の君とボク」のアパシリ・ニティポンらが共演する。掃除機のデザインは、ラッチャプーム監督の「実用性とバカバカしさを混ぜて」というリクエストに応じてインダストリアルデザイナーのシン・ハオチーが担った。
作品は第78回カンヌ国際映画祭でワールドプレミアを迎え、各国メディアより「ジャンルでは括れない」「驚くほど独創的」と評され、批評家週間グランプリを獲得。第98回アカデミー賞国際長編映画賞ではタイ代表に選ばれ、ショートリスト入りを果たした。
「タイで粉じん公害が起きるのは当然だ。ホコリでいっぱいの国なんだから」と冗談めかして語られもしたというが、ホコリに相当するタイ語には、スラングで“人間以下の扱いをされる者”という意味もある。「声を上げられず、自分の人生を自分で決められない、支配者階級の意のままに動かされ簡単に消されてしまう人々のことです」とラッチャプーム監督は説明し、「霊もホコリも厄介者で、本来いるべきではない場所と時間に現れるという点でよく似ています。家の中、テレビ画面、机の上……ホコリは境界線など関係なく勝手に現れますが、死んだ人間が生きている人間の世界に戻ってきたのが霊です。本来いなくなっているはずなのに時間に逆らってこの世にとどまり抵抗しているのです。こうした意味で(ホコリを取り除くための)掃除機に取り憑いた幽霊というのはアイロニックな存在だと考えています」と述べている。記憶と忘却、個人と社会、愛と有用性といったテーマへと深度を増していく物語に注目したい。
「ユースフル・ゴースト」監督・脚本:ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク
出演:ダビカ・ホーン、ウィサルット・ヒンマラット、アパシリ・ニティポン、ワンロップ・ルンカムチャット、ウィサルット・ホームフアン
2025/タイ語、英語、イサーン語/タイ、フランス、シンガポール、ドイツ/130分
英題:A Useful Ghost 字幕翻訳:橋本裕充
配給・宣伝:SUNDAE(Powered by Filmarks)
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